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十五話 各陣営の話

 ――第一王子陣営――


 第一王子ヴァドラーは、無理を言って婚約者となった男爵令嬢メアリ・ロードバスと共に、王が座っているはずの王座に座っていた。

 その前に、白髪の蛇を思わせる顔の男性が臣下の礼を取っている。


「王子殿下……いえ、陛下と呼ぶべきですかな?」


「ははは。やめてくれガロン。俺は未だ第一王子だ」


 蛇顔の男の言葉に、機嫌を良くしたのか鷹揚に笑う第一王子。

 その顔には一片の曇りも、陰りもない。


「ガロン様、こうして殿下と共にいれるのも貴方様のお陰です。有難う!」


 隣に寄り添うように座るメアリも、人を魅入らせる天使の様な笑顔で微笑んだ。

 その姿は正しく物語の主役とヒロインの様であった。

 その姿を見て、ガロンと呼ばれた男はニコリと笑う。

 まるで二人を祝福するかのように。


(……ククッ、馬鹿な王子だ。いとも簡単に騙される。それもこれも私が幼い頃より眼を掛けて接していたから、か。男爵令嬢もご苦労な事だ。これからが大変だと言うのに。……それにまだ第二王子は死んでいない)


 ガロンはここで勝負に出る事にした。


「殿下、第二王子……ヴァイス様ですが、如何なさるおつもりか?」


「ヴァイス? ……弟が何か?」


 ガロンの言葉に、きょとんと何もわかっていないと言う表情をするヴァドラーとメアリ。

 その表情を見て、ガロンは複雑な心境になる。

 この王子と娘は何もわかっていない。

 先ず現在障害となっているのは第二王子とその周囲の貴族達だ。

 ヴァドラーが王となれば、第二王子が何も言わずとも周囲の貴族達が反意を示すだろう。

 そして第二王子の方が相応しいと言ってくるに違いない。

 だからこそ、必要なのは相手を封じ込める事だ。

 そしてそれを行うのに一番簡単な方法は……


「殿下。第二王子が、貴方の新しき国にとっては障害にしかなり得ない、と言う事を理解しておいでか?」


 その言葉に、更に首を傾げる王子とメアリ。


「……良いですかな? 貴方方が王位に就く前でさえ、貴方方が王位に就くことを良しとしない者共が第二王子を担ごうと抵抗しているのです。更には我等のもとに暗殺者まで送ってくる始末……」


「――ちょ、ちょっと待て! 暗殺者だと!? 聞いていないぞ!」


「それは無論、こちらで処理しているからです。貴方方に余計な悩み事を抱えさせない為です。ご理解ください」


 ガロンの言葉に、暗殺者と聞いて安堵する二人。

 互いに「俺が君を守るから」、「えぇ、有難うございます」と砂糖より甘い会話を繰り広げる。

 それを見て、表情には出さなかったが、ガロンは本当に、本当に深い溜息を吐いたのだった。





 ――第二王子陣営――


 第一王子達がイチャイチャしていた頃、第二王子ヴァイスは頭を悩ませていた。


「……我が兄ながら阿呆なのか奴等は。……豪勢なパーティーをしたかと思えば、そのパーティーに着ていくドレスや服を国税で作って、しかもその国税を孤児院に誰の許可もなしに寄付……国の財が無限にあるとでも思ってんのか!?」


 積まれた書類に書かれた内容を見てぐったりとする。

 そしてそれに更に書類を積みながら、同い年程の青年がヴァイスに対して発言する。


「……殿下。あの頭がお花畑な方々の事を言っても仕様がないですよ。だからこうして我等がどうにかしてるじゃないですか」


「……はぁ。俺等についてくれてる貴族達に言伝を。『まだ動くな。俺が決着をつけるから、その時には頼む』って伝えてくれ」


 ヴァイスの言葉に、青年は一礼して部屋を出て行った。


「……はぁ」


 青年が出て行った部屋で、ヴァイスは深い溜息を吐いた。

 ここ数年、ほぼ毎日と言って良い程に第一王子派からの暗殺者やら諜報員やらが潜んでいたためまともに休めた時間が無かった。

 そこで、ヴァイスは誰もいないからと自身にとっての秘密が口から漏れ出した。


「……前世に比べて危険だし忙しすぎやしねぇか神様!」


 ダン! と机を叩いて叫ぶヴァイス。更に続けて言いたい事を言い出す。


「あー。異世界に行ったら可愛い女の子とイチャコラしたいと思ってたのにそんな暇もないし、魔術や剣の習い事だって厳しいし、王族としての教養も前世に比べて難しいし。……フツーの冒険者とかに転生したかったなぁ……。俺以外に転生してる奴とか、いるのかなぁ。いたら羨ましいなぁ」


 そう愚痴る。

 そう、インクセリアの第二王子であるヴァイス・インクセリア。

 彼こそが夜や暁達『互助会』が探す転生者であった。





 俺は宿のリビングで”蛇”を集めていた。


「……マグニフィカ王国次期王の依頼により、インクセリアとヴァーガニアの情報を調べる」


「畏まりました夜様。それで、いかに?」


「俺等は頭の命令に従いますぜ」


 俺の言葉に応じるザイール率いる”蛇”達。


「……”蛇”を二つに分ける。……ザイール、半分を率いてヴァーガニアを調べて。……もう片方は私とインクセリアで情報収集を行う」


「「「――はっ!」」」


 さて、動き始めますかね。

 これもお仕事お仕事。


 だが、その頃の俺には、これから起こる事は予想など出来るはずもなかった……。


 ――って言った方が何かあるっぽいよな。




ブックマークありがとうございます。

これからもよろしくお願いします

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