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十一話 到着

誤字脱字、ここってどうなってんの? な箇所がありましたらご指摘ください。

お願いします。


 馬車の中で、ラヴィオの話は続く。


「インクセリアはこの大陸の中でも古い歴史のある国家です。歴代の王の中には赤子の頃から常人とは異なる非凡なる才を発揮した者もいたと聞いております。小国ではありますが、そんな王を中心に、確実に、時に革新的に土地を治めてきております」


「……非凡なる才?」


「はい。衣服や食文化……特に米や鮮魚を食べる文化を大陸外から取り入れたのがこの国だと。漁業や農業、様々な分野において革新的な方法を生み出し、大陸の技術発展に貢献しております」


 ……成程。

 それって王家に転生者が時々生まれているって事か?

 まぁその可能性は低くないだろう。

 米とか鮮魚とか発想がいかにも日本人だ。

 そして今回、転生者がいて、関わっているならば、一番転生者の可能性が高いのは二人の王子だ。

 生まれにモノを言わせて贅沢三昧らしい第一王子と表に出てきていない第二王子。

 何方も可能性はある。

 先ずは王子達の人となりを知ることから始めよう。


「……王子の事、教えて」


「はっ! 第一王子ヴァドラーは現在十八歳。幼少の時より活発な性格で、臣下や教育者の影響からか手を焼く程に我儘に育ったと。婚約者は国の男爵家令嬢ですな。周囲の反対を押し切って婚約をした、との事です」


 うわぁ、何そのテンプレな感じ。

 あれですね。男爵家令嬢が我儘な第一王子と出会って、第一王子が変わっていって善き王になるってやつですね。

 それか第二王子が主人公なら二人揃って堕ちていくかだな。

 男爵令嬢の事も調べる必要があるかなぁ……。

 別に野次馬しようとなんてオモッテナイヨ?


「……第二王子は?」


「第二王子ヴァイスは現在十六歳。幼い頃に社交界に一度出たきり、表の場にでてきておりません。曰く、第一王子派に命を狙われているのだとか」


 命、ねぇ……。

 やっぱりどんな国にも後継者問題って起きるもんなんだな。

 あーべリオスみたいな王族じゃなくて良かった~。

 面倒だもんな~。


「それと……第二王子の方はもう既に政務に多少なり程関わる程に賢いとも称され、国民の間では第二王子の方が国王に相応しいと噂されております」


 おぉう。

 そんなことまで言われてるのか。

 どんだけ酷いんだよ第一王子。

 頑張れよ第一王子、それと男爵令嬢。

 お前等主役みたいな立ち位置なんだからもうちょっと頑張れよ。


「それと……」


 ラヴィオは俺に顔を近づけて囁くように言う。


「第一王子の取り巻きは多く、一部では既に両陣営共に諜報員や殺し屋、アサシンを放っているとの噂もあります。お気を付けくださいませ」


 そう言って顔を離したラヴィオはいつも通りの人の良さそうな柔和な笑みを浮かべた。






 その後、数日を掛けて俺を乗せた”兎の足(ラビットフット)”は太陽が一番高い位置に来た頃、インクセリア国の首都”ノヴェンダ”に到着した。

 馬車の中で座った儘で、外を眺める。


「……平和、そう」


 民衆には戦の噂は流れていないのか、道を行く人々は平穏そのものの表情だ。

 忙しなく走り回る商人や防具に身を包んだ冒険者、食材を買いに来た婦人に、彼女に抱えられている赤子、子供達は嬉しそうに遊びまわっている。


「どうやら貴族の段階で情報統制がされているようですな。……ですが、現王が健康であるならば戦争などにはならぬ筈……」


 ラヴィオの疑問に俺も頷く。


「……隠してる」


「でしょうな。恐らく病床に臥せっているのか、もしくは……」


 死んでいるのか――いや、殺されたのか、か。

 大陸中に情報網を持ち、得られぬ情報は無いとまで言われる程の”魔女の夜”でさえ王が病床であると言う情報は手に入っていないのだ。

 第一現王が健常であれば、第一王子の我儘を諫めないはずがない。

 ……そこらへんも調べる必要があるか。

 調べなきゃならないことがポンポン出てくるから、俺一人で調べきれるかな……。


「……会頭、もうそろそろ宿に着きますよ」


 馬車を操舵していた従者がラヴィオに声を掛ける。


「あぁ、分かった。……夜様、これから宿の方にご案内致します。”不如帰”に所属する者が経営する宿で、数日間は貸し切りにさせて頂いております。夜様には最も値段の高い部屋をご用意させて頂いております。どうぞ、お泊り下さいませ」


 ラヴィオの厚意に、俺は甘えさせてもらうことにした。





 到着したのは”水辺の山猫亭”と書かれた二階建ての木造建築だ。

 水辺で遊ぶ子猫が描かれた看板が掛けられている。

 まだ建てられて新しいのか、使われている木材に傷んでいる場所は無い。

 ……また高そうな。

 俺はラヴィオに先導され、”水辺の山猫亭”に入る。


「いらっしゃいませ。この度はご利用頂き有難うございます。オーナーのバッジオと申します」


 人の良さそうな、恰幅の良い体形のオーナーの後ろに従業員が並び、オーナーの歓迎の言葉の後に礼をする。


「貸し切りを予約した”兎の足(ラビットフット)”。その会頭のラヴィオ・オルファです。こちらこそ、よろしくお願いいたします」


「ラヴィオ様ですね。どうぞ、此方へ。お部屋へと案内致します。その他の皆様も従業員が案内いたします」


 バッジオに連れられ、宿の二階へと上がり、一番奥の部屋の扉の前に立つ。


「此方が我が宿で一番良い部屋です。此方はラヴィオ様のお名前で予約されておりますが……」


 バッジオはラヴィオ――ではなく、俺の方に視線を向け、


「此方の鍵は無くさぬようお願い申し上げます。――どうぞ、()()


 懐から鍵を取り出し、俺に手渡した。

 どうやら俺が”魔女の夜”の長だと理解していたらしい。


「……よくわかった、ね」


「……これでも何年もオーナーとして様々な人と接してきております。人を見極める眼は、あると自負しております」


 俺の疑問に、にこやかに、だが一筋縄ではいかない雰囲気を纏わせてバッジオは笑った。





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