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十話 情報収集

 結果として(まぁ当然の流れではあるのだが)、転生者が関わっているのかいないの確認は俺がすることとなった。

 この世界で何か大きな出来事が起きた場合、転生者が関わっている可能性は意外と思う程に多い。

 実際、『互助会』にいるメンバーもその殆どがそれを俺達創始メンバーが関わって解決した結果、『互助会』に加入している。

 だからか、こういった場合、転生者が関わっているのかどうかを確認するのだ。

 まぁ同じ世界から来た同胞なのだ。

 助け合う事は悪い事じゃないだろう。


 勿論、転生者の全員が『互助会』に加入している訳ではない。

 穏やかに、平和に暮らしたい奴はなるべく俺達とは関わらないように過ごしている。

 それは俺達が事件の()()に関わっている事が多く、それ故に命を狙われたり、恨まれたりが少なくないからだ。






 俺は『互助会』にいった翌日、早速情報の収集を開始することにした。

 とはいっても、大抵動くのは俺ではなく部下達だ。

 特に、”渡り鳥”や”蛇”、”不如帰”が主な情報収集担当である。

 だが、今回は俺自身が動くことにした。


 俺は王都にある、商人ギルドの前にいた。


「……」


 大人達が行き交うそれなりに巨大な門の前にいる俺はさぞ場違いだろう。

 が、それを気にしている訳にもいかない。

 俺はなるべく意識せずに商人ギルドの扉を開けた。


 商人ギルドは言わば、市場の様なモノだ。

 ここにくるのは商業を生業としている者の関係者位である。

 俺は忙しなく行き交う人々の間を抜け、とある人物のいる場所へ向かった。


「――さぁ、急ぎなさい! 時間は金! 商売人にとっては速さが命ですよ」


 近くの若い者達に声を掛けている壮年の男性に、俺は近寄り、


「――こんにちは! 小父さん!」


 そう声を掛けた。

 年相応(いまいち俺自身の年齢が何歳なのかは知らないが)より幼い可愛らしい声で、満面の笑みを浮かべる。

 ……気持ち悪いとか言わないでくれ。

 別に気が触れたわけでもない。

 どうやら、意識して演技すれば、あの喋り方から変えられるらしいのだ。

 しかし、あくまでも演技の時のみ。

 普段話すときはあの話し方になってしまうのだ。


「……! ――おや、マルザのとこのお嬢さんではないですか! よく来てくれましたね。もう少しで積荷の準備が出来るから。少し待ってて下さいね」


 一瞬、その眼に鋭利な感情を宿した男は、次の瞬間にはその表情に柔和な笑みを湛えた。

 その笑みは正に好々爺といった様子であり、彼の穏やかな人柄がよくわかる。

 この男の名はラヴィオ・オルファ。

 大陸中を移動しながら商売を行う移動商会”兎の足(ラビットフット)”の会頭である。

 そして”魔女の夜(ヘクセンナハト)”の諜報部署”渡り鳥”の長である。

 因みに、マルザとは同じく”魔女の夜”に所属する”不如帰”のトップ、宝飾店”金の貴婦人”経営者のアエリア・マルザの事だ。

 表向きとして、俺は彼女からの使いと言う名目になっている。


「うん! わかった!」


 俺はラヴィオにニコニコと笑みを浮かべて答える。

 ……オエエエエェェェェ!!

 きっもち悪っ!

 自分で言ってて吐き気がする。

 だが、幸い俺の表情にそれは出ない。

 仕方ない仕方ないと自分に言い聞かせる。


 その後、俺は準備が整うまで、ギルドの端で時間を潰すことになった。





「では、行きましょうか。さ、此方にどうぞ。お嬢さん」


「有難う! ラヴィオ小父さん!」


 ラヴィオの手を取って、商会の荷馬車に乗る。

 今回は五つの荷馬車での移動である。

 護衛も含めれば三十人と言う大人数での移動であった。

 目的地はインクセリア王国だ。


 俺が乗った馬車に乗ったのは俺以外にはラヴィオ、そしてもう一人の若い男の護衛だけ。

 彼も”魔女の夜”から派遣されている。

 それどころか、俺直属の部隊”鴉”からの出向である。

 だから俺の立場を知っている。


 そして、商会の馬車はゆっくりと動き始めた。





「……インクセリア王国ですか。……領土はマグニフィカに比べて半分程ですが、豊穣な大地によって生み出される様々な食材の宝庫ですし、貴重な鉱物も採れる良き国ですな」


 動き始めた馬車の中で、早速インクセリアの事を話し始める。


「……連れてってくれて、助かる」


「いやいや。貴女には大恩がありますし、今援助もして下さっておりますからな。我々で良ければ好きにお使いください。我等とて”魔女の夜”の一員。頭領の命には従いますよ」


 ラヴィオは穏やかに笑いながらそう言ってくれる。


「して、此度は如何なる理由でインクセリアに?」


「……情報収集」


 そう。情報収集だ。

 国内の情勢を探ると同時に、第一王子派、第二王子派の動向を探る。

 成るべくならば、戦争を主導した側にいる黒幕を知りたい。

 だが、依頼を受けなければ俺は動かない。

 だがそんなことは『互助会』メンバーも知っており、


『マグニフィカ王国次期国王べリオスとして依頼しよう。インクセリアの動向を探ってくれ』


 べリオスに先手を取られ、俺は結局関わる羽目になったのだ。

 ……くそう。


 まぁ依頼なら仕方がない。

 

 さて、主導がインクセリアだとしても、インクセリアが動くだけでは戦争にならない。

 ヴァーガニアも動かなければこんな盛大なことになってないだろう。

 つまりは内通しているの者がヴァーガニア国にもいるのだ。


 俺がインクセリアでやるべきことは多い。

 一つは『黒幕を見つける事』。

 一つは『第一王子派、第二王子派の動向と現状を探る事』。

 一つは『ヴァーガニアの内通者を見つける事』。


「……ふぅ」


 俺は溜息を吐いてラヴィオの話に耳を傾けた。




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