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百七話 暁との一日

お久し振りです。

ゆっくりですが投稿再開したいと思います。

 空は晴れ渡り、鳥が呑気に空を飛び、遠くから魔物の声が聞こえ……さっき飛んでいた鳥をワイバーンが咥えていった。

 とある日、広大なマグニフィカ王国の端にある山奥の一角、少し開けた場所に俺はいた。


「……」


 何故ならというと、目の前で


「さぁ、久しぶりに始めようではないか!!」


 と意気揚々と楽しそうに笑う鎧姿の脳筋女(あかつき)のせいである。






 数日前、俺は仕事の調整で暁の元を訪れていた。

 調整ってのは、暗殺依頼が来た場合、そいつを殺してもギルドに影響は出ないかを確認する摺り合わせ作業の事である。

 例えばギルドに出資しているとか、この人物を殺すと国政に影響が出るとか、そういった()の状況と俺の知る裏の情報を出し合い、影響がなく、かつ悪人であれば暁もはいどうぞ、と言ってくる訳だ。

 まぁそこら辺は暁だけで終わる訳では無いし、コイツの性格の場合「死んだのはそいつが弱いから」なんて言い出しかねない性分ではあるのだが。


 で、その時の事である。


「夜。付き合ってくれんか?」


 何てことを突然言い出した。


 付き合う? はて付き合うとは? 

 コイツは女で、俺は女――心は男と未だ譲れないが――で、付き合うとはコイツはレズか? 等と考えていたのだが、即座にコイツは頭が筋肉で出来ている事を思い出す。

 そして、それと同時に察せた。


「……手合わせ?」


 コクリと首を傾げて尋ねる。

 それに対し、暁は我が回答を得たりとばかりに頷き、


「そうだ。久しぶりに身体を動かしたくてな。最近長としての仕事……書類仕事ばかりで身体が鈍ってしまいそうでな。休みも取れそうだし……どうだ?」


 いや、どうだと言われても。

 そんな「これから飲みに行かないか?」みたいなノリで言われても……。


「では、三日後にしよう。そちらに迎えに行くから準備をしておけよ」


 しかも勝手に決めちまうし、休む事前提で進めてるし、また秘書に叱られるぞ。

 ……まぁどうせコイツは叱られても対して動じないし気にもしないだろうから良いけどさ。

 俺も久しぶりに全力で戦いたいし。






 そんな訳でやってきたのは人里離れた山奥である。


「さぁて……では始めるか」


 暁はいつもの鎧姿に、愛用の剣を担ぎ、そう言った。


「……(コクリ)」


 真正面から戦う事になっているが、俺はアサシンである。

 何処に世界屈指の剣士と真正面から戦う暗殺者がいるのか。

 ……ここにいる。俺である。


 俺も愛用のナイフを鞘から外して構える。


「……では――行くぞ!!」


 そう言うが早いか、暁が常人では視認出来ないであろう速度で肉薄し、剣を振り下ろして来た――が、一応は暁よりも速度で言えば負けない自信がある。

 振り下ろすだけで大地が抉れる一撃を俺は飛び退いて躱すと、直ぐに暁も剣を構え直し、もう一度、今度は剣を横に薙ぎ払った。


「――っ!!」


 俺はそれも避ける。

 暁とは絶対に剣を交わさない。

 脳筋馬鹿力女(あかつき)と剣を交わす奴は余程自分の力に自信がある奴か、無謀なバカのする事だ。

 大体、地面を抉る様な一撃をこの細身でどうやって耐えろと?

 無理無理。




 その後も暁が斬り掛かってきて、俺が避けるというのを永遠と繰り返すのであるが、暁曰く「早く動く敵をどう対処するかの良い鍛錬になる」だそうな。

 いや、俺だろうがお前に斬られたらひとたまりもないと思うんだが。

 コイツの頭に”手加減”の文字はインプットされちゃいるが、あまり意味がないので俺が避け続けるしかないのだ。

 とはいえ、この儘攻撃されっぱなしってのも癪である。


「――っ!!」


 取り敢えずはナイフを数本取り出して一気に投擲する――が、


「――フン!!」


 剣を振っただけの風圧で全部が吹き飛んでしまう。


「……【傀儡操る糸(マリオネイト)】」


 弾き飛ばされたナイフを、スキルで操って再度向かわせる。

 だが、


「その程度なら――フンッ!!」


 暁はナイフを身体で受け、そして見事に筋肉で弾き飛ばした。

 ……首とかにも刺さってた筈なんだが、どうしてあれで無事なのか……いや、暁だしなぁ。


「――では今度は此方から行くぞ!!」


 と、暁は如何にもスキルを出しますよという風に上段で剣を構え、


「避けろよ!! ――【裂界撃】!!」


 思いっきり叩きつけた。

 その瞬間、剣を叩きつけたところから大地が避け……ってお前そのスキル使ったら――





 ドン!!




 鳴り響く轟音と共に、()()()()()



 ……あっぶねぇ。俺ジャンプして避けてなかったら山ごと真っ二つだったぞおい。

 それ、普通に剣士クラスの最上位スキルの一つだぞ。

 呼んで名の通り”世界を裂く一撃”である。つまりまぁ海だろうが山だろうが裂けるというぶっ壊れ性能スキルだ。

 高ランクの剣士系プレイヤーであれば全員が覚えているので、あのコウリンも使えたりする。

 あいつは常識人だから使わないけどな。

 ……さて、


「おっと、ついついやってしまった。まぁ山一つくらい構わんだろ。あっはっはっはっは!!」


 なんてほざいているアホを叱りますかね。


「……暁」


「む?」


「……正座」


「……むぅ」




 因みに、この後暁が互助会メンバー(フランチェスカ以外)にこっ酷く叱られ、『半年間の俺との戦闘禁止』を言い渡されたのは言うまでもない。

 ざまぁみろ。




VRMMO こちらもアサシンが主人公となっております。

読んで下さると嬉しいです。


https://ncode.syosetu.com/n3391ff/


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[良い点] 脳筋に力を持たせた結果( ˘ω˘ )
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