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百六話 夜とハルキの一日

さて、短編として夜と登場人物達の小話を書いてきます。

何を書くかは決まってないので、「これ見たい」といった要望があれば教えてください。

感想等返信出来ず申し訳ありません。取り敢えずばここで指摘や感想に感謝を。

頑張って色んなジャンルが書ける様に……なりたいなぁ。


 普段、俺の予定はその朝決まる。

 朝起きて、朝食を食べてからバージェット率いる梟の部屋に顔を出して依頼――俺がやりたいと思った依頼や、バージェット達が俺にやって欲しい依頼――がないかを確認して、めぼしい物があればそれを受ける……のだが、


「……ない」


 この日は特に目ぼしい依頼は無かった。

 というか、ぶっちゃけてしまうと俺が関わらずとも、俺が普段やっている情報収集や暗殺等の殺しの仕事なら”蛇手”と異名が付けられる程の腕を持つザイールを筆頭に、ザイールが率いる”蛇”、俺が率いる”鴉”等腕の立つメンバーもいるので、俺が出張らなくても全然問題ないのだ。


「……バージェット。良い依頼、ない?」


 俺がそう訊ねると、バージェットは顎に手を置き、思案する。


「……そうですね。今夜様にやって頂く様な難解であったり、失敗が許されない厄介な依頼は私の耳にも入っておりません。今日は休まれては?」


 ふむ。

 休み、かー……。

 とはいえ、俺結構休んでるしなー。

 集められた情報を精査、管理する”梟”に所属している連中に比べたら多分倍以上休んでるだろうし……。

 でも俺が適度に休まないと、コイツらも困るだろうしなぁ……。良し、ここは部下の顔を立ててあげるとしよう。


「……解った。……何かあったら、連絡……して?」


「承知しております。後はお任せを」


「……うん。……じゃ、任せた」


 バージェットを筆頭に”梟”達に見送られ、俺は部屋を後にした。

 ……どこに行こう?






 衣装を目立たないモノに着替えて首都の賑やかな街並みの中を手持無沙汰に歩いていると、俺も仕事中毒(ワーカーホリック)なのだと自覚させられる。

 いや、まぁその『中毒になっているという仕事』が『殺し』なのは問題があるのかもしれない……が、まぁ今更だ。

 さてさて、先ずはハルキの所に寄っていこうかなー。






 そんな訳で、ハルキが働いている『黄金の林檎亭』へとやって来た。

 相変わらず絶えず客が入っているし、”魔女の夜”から派遣された――というか職権乱用で派遣した――護衛兼連絡役が俺を見て頭を下げる。

 それにコクリと応じていると、


「……あ、夜!!」


 俺の姿を見つけたハルキが、相変わらず少女と見紛うばかりの可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべて駆け寄って来た。

 うんうん、今日も可愛いなぁハルキは。

『ハルキを見守る会』副会長として安心である。

 多分世界一可愛い存在だと思う。


「おはよう! 今日は来るの早いんだね!」


 ニコニコと笑いかけてくるハルキに、俺は頷く。


「……うん。……今日、急に、休み……なったから」


 いつもは昼頃に来るのだが、それどころかまだ朝食を食って間もない。


「そっか。いつもので良い?」


 ハルキにそう尋ねられて少し考える。

 うーん……いつもは真昼間から酒を頼むんだが、流石に朝から飲む程好きって訳じゃないしなぁ……。

 考えた結果、俺は首を横に振る。


「……(フルフル)。……今日は……パフェと……紅茶、で」


「うん、わかった。……用意するからちょっと待ってて!」


 そういうと、ハルキはカウンターへと引っ込んで行った。

 暫くしてハルキがカウンターの奥から出てくると、途中でオーナーに捕まり何か言われていた。

 ハルキは何度か頷くと、もう一度奥に引っ込んでオレンジ色の飲み物が入ったグラスをパフェと紅茶が乗った盆と一緒に乗せて持って来た。


「お待たせ!」


「……オーナーさんと……何……喋ってた?」


 俺が聞くと、ハルキは苦笑を浮かべる。


「あー……うん。夜の相手をしておいて、だって。今日は此の後上がって良いからって」


 ……俺、そんな厄介な客かなぁ?

 一応色々あって困ってたこの店を立て直す援助してあげた側なんだけど……。

 普通なら感謝されるよな?


「……いいの?」


 俺が尋ねると、ハルキは苦笑いを浮かべた儘俺の耳に顔を寄せ、


「ほら、夜は資金とか護衛とか食材とか色々と援助してくれてるでしょ? だからオーナーからしてみれば顔色を伺いたいというか、気を使うんじゃないかな? 一応”暗殺集団”だって事は分かってるしね」


 小声でそう答えた。

 成程。確かに資金援助してくれる組織が暗殺集団――それもそれなりの組織と自負している――なら、いつヘマして自分に刃が向けられるか怖いだろう。

 いや、俺はそんな事しないし、俺の部下達にもそこら辺は徹底させているから、少なくとも”魔女の夜”(ウチ)に援助されてる事を怖がる事はないんだが。

 とはいえ、相手は表の社会を生きる模範的な一般人である。

 裏社会を生きる俺達の事を怖がる事は理解出来るので、この対応は仕方が無いと受け入れよう。

 ま、俺達と関わってる時点で純粋な”模範的な一般人”とは言えないかもしれないが。


「……そっか」


「と言う訳で、今日は僕と一緒にのんびり過ごそうよ」


 ハルキはニッコリと、純粋無垢で一切汚れのない笑顔を浮かべた。

 ……うん、女神だな。男だけど。



 この後メチャクチャ普通に買い物をした。

 主にハルキとか、服に興味のない筋肉女(あかつき)の為の服とかだ。

 で、暁のところ――つまりは冒険者ギルドのギルドマスター室――に押しかけて買った服とかを渡しに行った。

 アイツ本当にハルキとかが強制的に着せないと休日だろうがいつもの鎧姿だからな。

 俺も余り人の事は言えないけど。

 そして暁も入れて三人で晩飯を食ってから帰った。

 実に”一般的な女子”の一日だったと思う。

 三人の内一人が元男の女で、もう一人が元女の男である事は……気にしたら負けだ。





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