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百五話 男は再び神と会う

取り敢えず章の最後。

次からは閑話として日常回をやります。……内容はこれから考えるんですけど。

 死にたくない。


 死ぬのは嫌だ。


 痛いのは嫌だ。


 俺はいつ解放される?


 この痛みから。


 この苦しみから。


 俺はただ、殺したかっただけなのに……。





「だからだよ」


 ふと聞こえた変声期前の少年の様な声に、男が眼を覚ますと、そこは真っ白の部屋だった。

 机から、花瓶から、それに差してある花も、全てが純白の、”生”が感じられない部屋。

 そして、男の目の前で、純白のソファに座っていたのは、


「神……」


 男を転生させた神だった。


「全く、君やり過ぎだよ。……転生して改心してくれると思ったんだけどね」


「改心……だと?」


 男は神を睨みつける。


「アンタが俺を転生させたのは、俺の欲望を叶えてくれたからだろうが!! 俺に、人を殺して良いと思ったからじゃねぇのかよ!?」


 男は自分の身勝手な考えを神にぶつける。

 だが、それを神は意に介さない。


「君を転生させたのは、君の運命を捻じ曲げて死ぬ運命ではなかったところで殺したからさ。……転生して大人しく平穏に……とは言わないまでも、せめて君と同じく転生して過ごしている子達と同じ様に、生きて欲しかったんだけれど」


 ――あの子みたいにね。

 そう呟く。


「……あの子?」


「君を殺した子さ」


 神の言葉に、男は己を殺した銀髪の少女を思い出す。


「僕のお気に入りでね。だから彼女を”模神(デミゴッテス)”にしたんだけど……彼女は君と同じさ。”人を殺さずにはいられない”。そういう性を背負ってる。……というか、そういう風に()()()。それにそういった事に対する嫌悪感もなくしてあげた。状況的には君よりもよっぽど酷い子だ。でも、彼女はそれでも尚壊れずに……狂っている事を誰にも知られずに生きている。君もそうなれると思ったんだけど、ね」


 神は男に苦笑いを向ける。


「……君を転生させた件で、フランチェスカに怒られてしまったよ。あの子はあの世界が好きだからね。僕に説教出来るのなんてあの子くらいだよ全く。……また後で叱るってさ。フフフ」


 怒られるという言葉とは反対に、それでも神の顔に浮かんでいるのは嬉しそうな、慈しむ様な笑みだ。


「……さて、君の処遇だけれど、どうしようか?」


 そして、その慈しむ様な笑みを浮かべた儘、神は男を裁定する。


「君は数多くの人間を殺した。無論、それは他の人間もやっている事だ。あの世界では当たり前の事だ。それでも、君は裁かれるべきであると言う者達がいる。それに、君を此の儘転生させてしまっては、また同じ結果を生むだろう」


 そこまで言って、神は暫く思案する。

 そして、男への処遇を決める。


「君が君である限り、同じ事が繰り返されるだろう。誰よりも君がそう望んでるだろうからね。……なら、君が君でなくなれば良い」


 神はそう言うと、男の方に指先を向けた。

 男の周囲を、白い光が包み込む。……いや、徐々に男が光へと変わっていく。


「な、何を!?」


「君の前世、今の君の記憶、因縁、因果……君に関するありとあらゆる全てを消し去って、()()()作り直すんだ。まっさらで無垢な魂にね」


 神の言葉を理解した男は戦慄すると同時に、まるで水に溶けていくかの様に自分と言う存在が解けていくのがわかり、叫ぶ。


「や、やめてくれ! 俺が消える! 嫌だ! 俺はまだ殺したい! 殺したりない! もっと、もっと!! 殺したいのに――!!」


 自分という存在が消えていく。解けていく。解けていく。

 殺したいという衝動を、歓喜を、興奮を、忘れてしまう。忘れさせられてしまう!!

 だが、非情にも男の粒子化は止まらない。

 既に首下までが粒子と化した男は、


「――嫌だ!!」


 その言葉を最後にして、小さな光となった。

 そして殺人鬼だったそれは、ふわりふわりと神の周囲を嬉しそうに飛び回る。


「フフフ、可愛いね。……さぁ行っておいで。君の生に、幸あらん事を」


 神が光を優しく突くと、光はもう一度だけ神の周囲を飛び回り、どこかへと消えていった。

 それを見送った神はさて、と立ち上がると、


「フランチェスカに怒られに行こうかな。……フフフ、あの世界も色々面白いからね。今度は何が起こるんだろうね」


 真っ白の部屋から消えていった。







 ランドグリーズは国家として崩壊した。

 王族、貴族達は軒並み死に絶え、都市部の市民達も虐殺された。

 残っているのは国境警備をしていた兵士達や、男が襲わなかった都市の者達だ。


「……これから、どう……する?」


 崩壊した王城の、辛うじて残った王座に座った夜が、目の前で臣下の礼を取る二人に対してそう訊ねた。

 二人は体制崩壊前から”魔女の夜”の部下になっていた軍人と貴族――其々名をグレイグ・アルノーとカスパー・ロックバードという――である。


「どうする……とは?」


 グレイグは夜に向けて聞き返した。夜は表情を一切変えず、二人の眼をジッと見る。


「……トップ、なる?」


 グレイグやカスパーという余り夜との接点がない新参者達にとって、夜の口から発せられる少ない言葉で、彼女の意図を理解するのは難しかった。

 それでも尚頭をフル回転させた結果、自分達が国のトップとなって国を建て直すかと問われているのだと察する。


「我々に、旗印となれ……と?」


「……この国を立て直す事が可能なのですか?」


 これ程までに荒れ果て、人民が死に絶えた国をどう復興するのか、軍人であるグレイグも、貴族であるカスパーも想像が出来なかった。

 だが、目の前にいるのは大陸最大の秘密組織”魔女の夜”の頭領である。

 感情のない人形の様な眼が、グレイグとカスパーの心の底まで見通しているかのように錯覚する。


「”魔女の夜(わたしたち)”が最大限援助、する。……物資、人、労働力。……この国は”魔女の夜(あなたたち)”のモノ」


 夜の言葉に、二人は驚き、やはり頼って間違いなかったと思うと同時に、目の前にいる存在を恐ろしくも感じた。

 目の前にいるのは、とんでもない”化物”であると察して。

 だが、二人はそれを表情に出さぬようにし、グレイグは軍人として敬礼を、カスパーは貴族として頭を下げる。


「承知しました。……全力を以て、この国を再建します」

「我等は”魔女の夜”。……この国は貴方のモノだ」


 二人の様子にも、夜は表情一つ動かす事無く、


「……他国との友好。……それさえ守ってくれれば、勝手に……して。……じゃ」


 そう言うと、霧の様に消えた。





 閉鎖的な国として有名だったローデンタリア。

 とある殺人鬼によって崩壊した国は、一人の軍人と一人の貴族、そしてその部下達のその優れた手腕によって、とてつもない速度で再建されていった。

 前国王、軍部、貴族達に協力し、国境に殺到した一般民を凌辱し、殺した兵士達の悉くは何処へかと姿を消し、周囲を囲む他国とも、エルフの女王フランチェスカや大陸一の大国マグニフィカ、そしてそれには劣るがそのマグニフィカと良好な関係であるインクセリア等の介入によって友好的な関係を結ぶ事に成功。

 以降ローデンタリアは名を変え、”ファミリアクロウ議連国”として、議会を中心とした国となる。


 だが、その国が実質的には悪名高い”魔女の夜”の傀儡であると知る者は、一握りである。



次からは書いたら投稿にします。不定期です。

あ、誰視点でーとか、誰と誰の組み合わせの話が見たいーとか、こういう話が見たいとかありましたら感想覧なりメッセージなり、ツイッターなりで言って下されば頑張って書きます。

夜にゴスロリドレスとか、水着とか着せてやろうか……。

今まで書かなかった色んなキャラの視点でも書きたいと思いますので、閑話とか言いながら阿呆みたいに長くなるかも……。


マイペースに書きますので、まだまだお付き合いの程宜しくお願いします。



現在TS新作ともう二作品の計三作を同時進行で書いてます。……もうどれを優先で書けば良いのかぐちゃぐちゃですよw



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