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百二話 対決2

お待たせいたしました!!



 槍を手にギラギラと眼をギラつかせている男に対し、暁は余裕の表情で剣を構えている。


「行くぜぇええええええ!! ――オラオラオラァ!!」


 男は叫びながら暁に肉薄し、槍を連続で繰り出す――が、


「――ふむ」


 カキン!


 暁は男の繰り出す槍を危なげなく避け、時に剣で防いでいく。

 暁の奴、まだまだ流してるな。小手調べって感じだ。反撃もしてないしな。


「――オラ、オラ! 死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」


 ……あの男「死ね」しか言わないな。口が悪いったらありゃしない。

 まぁ壊れた人間にマトモな対応を求めるのも酷な話か。


「おら、どうしたよ! 避けるだけかァ!? バカでかい魔力は張りぼてかよおい!!」


 男にどれだけ言われようと、暁は男を見極めているかの様に攻撃を防いでいく。

 ……というか、暁眼ェ瞑ってるな。まぁそれ位の実力はあるから無茶ではないし、余裕なんだろう。

 それが時間にして十五分程経った頃だっただろうか、暁は勿論男も持久力(スタミナ)はあるのかずっと攻撃を続け、


「……ふむ、ここら辺で良いだろう」


 そう言って暁が眼を開け、


「――フッ!!」


 攻撃しようと近付いて来た男の手から槍を弾き飛ばした。


「ちっ! ……なめてんじゃねぇぞクソアマァ!!」


 男は悪態を吐きながらも、即座に槍を出現させ、暁に向かっていく。

 しかし、暁には届かない。


「”吸血公ヴラド”の能力か。……厄介だとは思うが」


 もう一度男の手から槍を弾き飛ばし、呆れた様に言う。


「――使い手が素人ではな」


 そう、俺も見ていて思ったのが、男の戦い方の素人さだ。

 まるで、剣道や柔道等をやってこなかった未経験の素人が高い身体能力と衝動に任せて戦っているかのような戦い方。

 恐らく、それは考えとして強ち外れていないのだと思う。


P(プレイヤー)K(キラー)と聞いていたが、マトモな敵と戦った事がないのか? いや、そうなのだろうな」


 男がこの世界に転生させられてきてまだ左程時間は経っていない筈だ。

 この男は、ちゃんと敵と()()()()()()()()()のだろう。

 暁が言ったのはそういう意味だ。

 コイツは戦った事がない。相手と武器で打ち合った経験がない。対等な敵と戦う方法を知らない。

 だから力任せ、衝動任せの戦い方になる。

 知っているのはゲームでのPK法、スキルとゲームの仕様に頼った戦い方だけ。

 それだけで勝てる程、この世界も俺達も甘くない。


「クソ野郎――がっ!!」


 男が苛ついたように地団太を踏むその一瞬、男がニヤリと笑うのが見えた。

 次の瞬間、暁のいる足元から血の色の槍が現れた。






「……なんで……だよ」


 そう呆然と呟いたのは男だった。


「ふむ……なんでと言われてもな」


 片や暁は無事だった。というより、その身体には傷一つない。

 理由は単純明快だ。

 槍が現れる瞬間、暁が一歩分だけ後ろに下がったのだ。


「お前のそのスキルは私も覚えがある。”吸血公”のスキル……確か【串刺公(ツェペシュ)】だったか? 確かに強力なスキルではあるし、ある程度の者達になら不意打ち出来るだろうが、私には効かんぞ」


 事も無げにそう言って、暁は不敵に笑い、続ける。


「そもそもそのスキルは対象者の真下から発動するのだろう? だからこうして少し動いただけで避けられる。高レベルの【気配察知】や【魔力探知】を会得している人間にとって避けるのはそう難しくない。次からは気を付けると良い」


 ――では、次は此方から行くぞ。

 不敵な笑みを浮かべた儘、暁は剣を構える。


「――おおおおおおっ!!」


 常人にも見える速度だが圧倒的な存在感を伴って男に肉薄し、気合と共に一閃。


「――くっ!?」


 辛うじて男は避ける。

 男がいた場所を両断した剣は地面を砕き、陥没させる。

 常人がやればただの気合の入った力強い一撃であるが、暁がそれをやれば大地を割る必殺の一撃となる。


「避けるか。……だがどこまで避けられるかな?」


 暁の戦い方を表すならば『苛烈』だ。

 剣を振り回し、圧倒的な力に身体強化や属性付与等のスキルを併用する事でただでさえ長いのに更に長くなるリーチを活かして一方的に、まるで嵐の様に怒涛の攻撃を行う。

 だが力任せではなく、才能と技術、そして経験に裏打ちされているのが、暁の戦い方だ。


「クソがっ! ……ッ! 【血の盾(ブラッディーシールド)】!!」


 暁の接近に悪態を吐いた男は自分が持つスキルの中でも数少ない防御型のスキルを使った。

 だが、それも何の役にも立たない。


「ふっ!!」


 暁の常軌を逸した腕力から繰り出される一撃は、血で出来た盾を一瞬で壊す。

 壊された盾の血が撒き散らされる中、暁は迷う事なくその中へと突っ込み、


「腕は頂くぞ」


「――ッ!!」


 男が血の槍を生み出すより早く、接近した暁の剣が男の両腕の肘辺りから下を斬り落とした。








「あ゛、あ゛ぁ゛……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィィイイイイいいっ!!」


 暁に両腕を斬られた男が、両腕から大量の血を滴らせながら痛みに叫ぶ。

 前世であればとっくに死んでいたであろうが、頑丈となった身体がそれを許さない。


「どうした? 斬られたのは初めてか?」


「あぁ……あがぁぁぁぁぁ」


 暁の問いにも、男は痛みに呻くだけで反応がない。

 まぁ腕を斬られるのは初めてだろうし、前世で腕が斬り飛ばされるなんて経験なんて滅多にある筈もない。

 痛いだろうなぁ……。【痛覚遮断】とかのパッシブスキルがあればまだ少しマシになるだろうけど。

 と、突然男が腕からボタボタと血を垂らしながら立ち上がる。

 その顔には『怒り』がありありと浮かんでいる。


「ァ、ァア……ァアアアアア!! 痛ぇじゃねぇかよ畜生がああああああああああァァァッ!! ――【召喚(サモン)串刺公(アーミー・オブ・)の軍勢(ザ・ツェペシュ)】ッ!!」


 男が叫んだ次の瞬間、男の周囲の血溜まりが広範囲に広がり、そこから血の色の鎧兵達が現れる。


「ほぅ……まだまだ楽しめそうだな」


 だが、暁は動じない。

 静かに剣を構え、ニヤリと笑った。




強さのインフレどころか、最初っから振り切ってるんだよなぁ……。

この編終わったらゆっくり日常編でもやろうかな。

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