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百一話 対決1

投稿遅くてすんません!!

ちょっと書く時間が取れず、取れても思いついた別作品をつらつらつらつらと書いておりました。


 ローデンタリアとの国境沿いに、俺と暁は到着していた。

 暁も俺もちゃんと完全武装状態である。

 暁は愛用の紅色の鎧に愛用の剣を背負い、俺もいつもの衣装姿にいつものナイフを鞘に入れて腰にぶら下げてある。


「――ふむ、随分とまぁ血の臭いが濃いな」


 数百メートル先の関所では、ローデンタリアの兵士達が無理にでも出ようとする人々を遠慮なく殺しており、それによって積み上げられた死体から強烈な血の臭いが漂っていた。


「……ローデンタリア上層部が……他国に情報を出させない様にって……命じた……結果」


 そのせいで兵士達は「王の命令」を盾にして自分達の欲望の儘に老若男女を問わず殺したり、女であれば犯したりしている。

 裏で生きる俺にとっては見慣れた光景ではあるのだが、王がそれを命じるのだからこの国も終わりだな。


「で? ここまで来たは良いが、これからどうするんだ?」


 暁が気負いない顔で聞いてくる。


「……目標(ターゲット)は……王城に……いる。……でも、多分、全員殺し……終わってる」


「む。……となるとローデンタリア上層部は壊滅か」


 暁はそう言って肩を竦めた。

 まぁそうだろうなぁ……。

 潜入している俺の部下達はとっとと出国させた――勿論殺されるなんて阿呆はしない――ので、上層部の中にも生き残りはいるっちゃいるのだが、少なくとも緊急事態において王城に詰める様な上層部の人間は皆殺しだろう。


「……国滅んだら……新しいの、作れば……良い」


 国民なんてものは上層部の顔が入れ替わっても自分の生活が変わらなければ意外と何も言わないものである……と言われれば怒られそうだが、実際に今まで関わって来た国でも上のゴタゴタで人間が変わっても、変わる前から悪くならなければ暴動等も起きない。


「この前言っていたな。……今度は国まで作るか。”魔女の夜”の影響力がまた大きくなるな。……まぁそれで悪い事にならんのなら私としては構わんし、周辺諸国からしてみれば今の国よりもマシに見えるだろうが……」


 確かに、トップが俺なのにたった数年で此処まででかくなるとは思わなかったよ。


「で? どうするのだ? 聞けば随分な殺人狂なのだろう? これ以上放っておけば他国にまで手を出すぞ? 流石にギルドマスターとして、これ以上の被害は見過ごせん。幾ら責任が当人にある冒険者達だろうと、犠牲には出来んからな」


 勿論、そこら辺は考えてある。


「……相手、私達と同じ。……少なくとも、ハルキより……上。なら……最低限【魔力探知】や【千里眼】、持ってる……筈」


「……ふむ? つまりは?」


 お前本当にギルドマスターか?

 書類仕事が仕事の殆どって言ってただろうに、何故わからん。


「……暁、本気で魔力解放、する。……向こう、気付く。そして戦う」


「つまり私に虫寄せの街灯になれと?」


 ……うむ、その通り。

 俺が頷くと暁は少しだけ嫌そうに眉を顰めたが、諦めた様に笑い、


「――仕方がないな。では、やるとしよう」


 暁が魔力を開放すると、暴風が巻き起こった。











 男は串刺しにされて並べられた王や王妃、貴族達を見て満足気に笑っていたが、不意に物足りなさを感じた。

 もっと、もっと殺したいという殺人衝動は、更に男の理性を壊し、狂わせていく。

 もっと殺したい場合、どうすれば良いか。


「――【魔力探知】」


 男は考えた結果、周囲の魔力を探知する術を発動させる。

 とはいえ、【千里眼】に比べれば探知できる距離なんてたかが知れている。


「――!!?」


【魔力探知】を発動した結果探知したのは点の様な小さな数多の魔力反応と、遠くにある筈なのに圧倒的なまでの存在感を放つ膨大な一つの魔力反応だ。


 ――へぇ、面白れぇ。


 男は知らずの内に舌なめずりをしていた。

『ザ・ワールド・オブ・エタニティ―』においてレベル差というのは抗いがたい力量だった。

 ゲーム内ではステータスが全てだった。

 だからこそ、男も考えに考え、トッププレイヤー達には手を出さなかった。


 だが、今は違う。

 この世界で、レベル差など大した事では無い。

 命ある者は殺せる。

 いや、殺す事を矜持と決めた者として、どんな存在でも殺して見せる。

 今の自分には、力があるのだから――。


 男は笑みを濃くすると、歩き出した。

 その莫大な魔力を放つ存在の元へ。







 血の臭いというものは誤魔化せないものだ。

 特にこの姿になってからだが、『殺し』をしてきた者特有の”死臭”というモノには敏感なのだ。

 だからこそ、遠くからでも、察知出来た。

 濃い、濃い――”死”と”血”の臭いが近付いてくるのを。


「……後数分もすれば来る」


「そうか」


 暁の纏う空気が一気にピリッとしたモノに変わる。

 そして――




「――魔力の根源はテメェかぁ?」


 男が現れた。

 うん、遠くからだが確認した通りの外見の男だ。

 顔に手に、髪に……まぁ随分と血に塗れているが……。

 数千、数万といった人間を殺したのだから当然だろうが……。

 眼も血走っているし、サイコパスの殺人鬼ってのに姿を与えたらこんななのだろうという典型な感じだ。


「そうだが?」


 暁が背負った剣の柄に手を伸ばす。

 対して、男はニタニタと笑みを浮かべ、身体をユラユラと揺らすだけだ。


「テメェがどんだけ強ぇのかはわかってっけどよぉ……」


 男が裂けんばかりに口角を上げて笑う。


「俺に勝てんのかよ? エェ? 女ァ……」


 そんな男を無視して、暁は俺の方をチラリと見てきた。


「……一先ずは私が相手で構わんな?」


 ……うーむ、まぁ相手が暁の方を見て笑っているから、相手も暁と殺り合いたいのだろうとは予測出来る。

 仕方ないなぁ……。


「……(コクリ)」


 俺が頷くと、暁は背負った剣を引き抜く。


「――では、私が相手しよう。殺人鬼よ」


「へへへ……愉しみだぜぇ。殺すのは愉しかったけどよォ。張り合いがねぇからちっとばかし退屈だったんだ。だからよォ……」


 男が手に血の色をした槍を出現させる。


「――愉しませて貰うぜェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!! ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 男の嬉しそうな耳障りな狂った笑い声と共に、殺し合い(ゲーム)が始まった。







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