九十九話 王城襲撃
短い上に展開が遅くて申し訳ないです。
新作を書いてるんですが、文字数を少なくして頻度を上げるか、今の儘のペースにするか迷ってます。
……どうしよ。
ローデンタリア王城を前に、男は笑みを堪えられずにいた。
『ザ・ワールド・オブ・エタニティ―』内で再現された西洋風の城は何度も見た事がある。
だが、それはあくまでも再現された”偽物”であるし、実際の王が住んでいる訳ではない。
しかしここはそうではない。
実際の王が住んでいる、本物だ。
本物の権力者を、これから殺すのだ。
他人の事を見下し、王座でふんぞり返っているクソ野郎を殺せばどれだけ気持ち良いだろうかと、男は想像する。
勿論、逃げられる可能性もあった。
だが、それを見越して既に兵士達を配置している。
逃げられる可能性はゼロだ。
「さぁ、メインディッシュだ! ――【血の大砲】!!」
固く閉ざされた城門を、スキルによって破壊する。
轟音と衝撃と共に、城門が崩れ落ちた。
「――テメェ等はここで待機だ」
血の兵士達にそう命じ、男は瓦礫となった城門を越え、城の中へと入っていった。
「来たぞ!!」
「此処を死守する!!」
「油断するな! 相手は化物だ!!」
城の中は緊急事態宣言が発令されている為、常駐の兵士達どころか、休みや退役軍人を含めた出来うる限りの兵士達を招集し、兵士見習いの少年達まで駆り出されていた。
それが、人一人覆うような大きさの大盾を手に、整列していた。
その後ろには槍兵が、その後ろには魔術師達が並んでいる。
「――おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!」
男の顔に浮かぶのは――狂った様な笑みだ。
男は手に血の色の槍を出現させ、それを魔力で操り、射出した。
「――がっ!!」
男が放った槍は大盾と大盾の間の僅かな隙間から顔を出し、男を見ていた兵士の一人の頭へと刺さった。
それを見て、兵士達の間に動揺と恐怖が広がっていく。
男はそれを見て、物足りないと思ってしまった。
「そんなんじゃただの射的だぜぇ? もうちょい殺してやろうっていうやる気勢はいねぇのかおい? ほらほら頑張れー! じゃなきゃ俺が全員殺しちゃいまちゅよー! ヒャハハハハハ!!」
男に馬鹿にされていると理解しているが、兵士達は男を恐れて手を出せない。
それを見て、笑っていた男はふと笑うのをやめ、肩を落とした。
「……おいおい、がっかりだぜ。これだけ煽れば少しは殺す気で来てくれるかと思ったのによぉ。…………後は王様に期待だな。……【串刺公】!!」
男は地面をダンと踏む。
それが合図となって、整列していた兵士達の足元から槍が現れ、兵士達を串刺しにしていった。
鳴り響く兵士達の絶叫が王城内に響く。
「――ハ、ハハ、ハハハハハハ!!」
その声を聴きながら、男は更に奥へと歩いていった。
兵士達の絶叫は、王座の間にいる王達の元にも届いていた。
王宮の別の部屋にいる筈の王妃や、まだ幼い王子や王女達も護衛のしやすさから集められており、心配そうな顔をしている。
軍部を預かる元帥以下軍部幹部達は眉を顰めるだけで済んだが、王や貴族達、彼等を護る兵士達は顔を青白くさせ、今にも逃げ出しそうな程に怯えていた。
「元帥! 大丈夫なのだろうな!?」
「もし突破されたなら貴殿の責任だぞ!?」
青白い顔をした貴族達が元帥に詰め寄る。
だが、元帥は彼等を一瞥して、溜息を吐く。
「……勿論、軍部を預かる者として責任は取りましょう。……ですが、先程言った筈です。相手は”紅血”やエルフの女王と同じ化物だと。それを逃げぬと言ったのは王であり貴方方だ」
「な――何だと!?」
「無礼にも程がある!」
紛糾する貴族達、それを呆れる様に見る軍部の幹部達、それを見守る王族達。
そこに、絶望は現れる。
ドゴオオオォォォォォォォン!!
大きな音を立てて扉とその周囲の壁が壊され、土煙が充満する。
王族も貴族も軍人達も、その場にいる全ての人間の視線が底に集まる。
「よぉ。楽しそうに話してんじゃねぇの」
その中から、血塗れの男が現れた。
その眼は血走っており、口には狂った様な笑みが浮かんでいる。
「――俺も混ぜてくれよ」
――死が、形を持って彼等の目の前に現れた。