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零話 プロローグ 黒の暗殺者

新しく始めるTSモノです。

ゆっくりと更新していきたいので長い目で見てください。

拙い文章ですが読んでくださるとうれしいです。



 月明かりが眩しい夜、それに照らされたとある部屋の一室で、禿げ頭の眼光鋭い壮年の男が蝋燭の火を灯りに机に向かって書類にサインをしていた。

 彼はとある町に拠点を置く、闇闘技場や奴隷の売り買い等を行っている組織のボスだ。

 彼の隣にも、薄絹しか纏っていない眼の死んだ若い女性の奴隷がロープに繋がれていた。

 彼女は元々は貴族の出ではあったが、親が借金を作った故に売られたのだ。

 そのロープは男の手元に伸びていた。


 だが、男の表情が徐々に険しくなり、とうとう机をバンと叩くと奴隷に繋がれたロープを引っ張り、部屋に置かれている簡素なベッドに女性を組み敷いた。

 女性の肌を男の舌が走り、その度に女性が嫌そうに身を捩る。

 男は鼻息荒く女の服を脱がそうと薄絹を手に掛けた次の瞬間――


「――がっ!」


 男の後ろから、側頭部と心臓部にナイフが突き立てられていた。

 女奴隷に男の血が大量に垂れる。


「……へ?」


 女性の口から間抜けな声が漏れる。

 女性を組み敷いていた男の身体がゆっくりと横に倒れ、グシャリと音を立てる。

 男がいたはずの場所の更に一歩後ろにいた()に、女性は今更気付いた。


「女……の子?」


 そこにいたのは美しい少女だった。

 歳は十代中盤から後半位だろうか、肩程に無造作に切り揃えられた少し癖毛の銀髪に、熱い炎の如く紅い眼、表情をまるで感じない人形の様な、愛らしい、と言うよりは美しさを感じる端整な顔立ちは、同じ女性でありながらまるでこの世のモノとは思えない程に神秘的かつ美しい。

 スラッとした細身の体格は踊り子でもやっていけそうな程で、『黄金比』と言える程に整っており、闇に溶ける様な黒い、ベラドンナの花を模した装飾の付いた身体にぴったりと貼りついた服も相まって同性でも目を惹きつける。


「……」


 銀髪の少女がジッと、澄んだ中に烈火の如く燃え上る炎を宿した様な紅い眼で女性を見る。

 女は何も言えなかった。

 いや、本能だったのだろう。

 何か彼女に不都合なことを発言すれば、自分も横で倒れている男と同じ運命を辿るであろうと何も言われずとも理解できた。


「……」


「……えっと、あの」


 少女が何も言わないので、女はどう反応すれば良いのか分からなかった。


「……ここから、出る?」


 ふと、鳥の囀りの様な声が聞こえた。

 女は最初、目の前の少女の声だとは理解できなかった。


「……ここから、出たい?」


 少女がもう一度口を開いたことで(ようや)く、目の前の少女が話しているのだと分かり、その意味を理解して、


「――は、はい!」


 食い気味に、そう返事を返した。

 それを聞いて、少女は頷き、


「……じゃ、出る」


 そう淡々と言うと、少女は女に手招きをして普通に扉から部屋の外へと出た。

 女は、堂々と歩く少女の後ろを小動物の様についていく。

 周囲からは怒声と悲鳴、剣戟音が聞こえ、それが聞こえてくる度に女はビクッと身を震わせた。


「あ、あのっ! これ、今どうなってるんですか?」


 怯えた女の質問に、


「……安心、して? 私の部下、連中と戦ってる。……こいつら、少し、増長しすぎた。だから、潰す」


 少女の口から放たれた物騒な単語に女は眼を見開いた。

 更に、目の前の少女は今、()()と言った。

 つまり、今ここにいる先程死んだ男の部下を襲っている連中の長が彼女だと言う事だ。


 廊下を進むと、血塗れで倒れている男達、それを見下ろしている武器を持った年齢、性別関係なく様々な人々が十数人程度立っていた。

 人々は少女の姿を見ると武器を降ろし一斉に頭を下げ、


「「「(かしら)、お疲れ様です!」」」


「……スイ」


 少女は自分を頭と呼んだ人々に対して無言で頷いて手を上げて応じ、その中にいた人の内の一人、最も若いであろうスイと呼ばれた少女に向けて声を掛けた。


「はい! 何ですか(よる)様!」


「この人の護衛……お願い」


「お任せなのです!」


 スイと呼ばれた少女は嬉しそうに飛び跳ねながら元気よく頷く。

 女は目の前の少女を、未だ混乱の解けていない頭で(あぁ、夜って名前なんだ。似合うな)とそう思っていた。

 理由は何となくだ。

 少女の着ている服がほぼ黒一色だからかもしれない。

 銀髪の少女――夜は其の儘部下を引き連れて廊下を進んでいった。


 残されたのは女とスイの二人。

 死体が置かれ、血の匂いが濃厚に漂った場所に場違いな二人であった。


「じゃ、安全な場所に案内するのです!」


「え……えっとぉ」


「安心するのです! すこーし()()()()()()()かもですけど、身の安全は保障するです!」






 ”魔女の夜(ヘクセンナハト)”は、大陸中――いや、世界中に拠点を持つ巨大集団であるとされている。

 されている、と言うのは実際の規模がどれ程なのかが知られていないからだ。

 そして、その組織の仕事は暗殺、傭兵、護衛、野盗の真似事等々多岐にわたる。

 更には、表では知られていないが、高名な服飾店、商会、武具店、酒場等を運営しており、その資金は小国一国分はあるとまで言われている。


 その長の地位に少女が座っていると言う事は、余り知られていない。

 更には構成員の総数、幹部が誰か等、秘密も多い事で知られている。

 だが、その中でも幹部すら知らない最大の秘密、それは――


 長である少女、夜。

 彼女が『転生者である』と言う事だ。



訂正しました。

主人公の年齢描写

十代後半→十代中盤から後半位


誤字脱字等ありましたら指摘お願いします。

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