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映し鏡と現世の!  作者: イノタックス


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6/18

第6話 市民プールと待ち時間と。

夏休みに入ってから、2回目の土曜日。

午前8時50分。俺の家の前には、新庄と裃さんが来ていた。


「おはようございます、水留さん!」

「鼎ちゃん! おはよー!」


まだ2回しか会っていないはずなのだが、かなり仲良くなっている。

そこはやはり、女子だから、なんだろうな。


「……なあ、橋月」

「なんだ?」


新庄、小声で俺に話しかけてきた。


「滝宮ちゃん、清楚すぎやしませんかね」

「……否定はしない」


今日の滝宮さんは、真っ白のロングワンピースに、フリル付きの白の靴下、それと母さんのグレーのスニーカー、といった服装になっている。

全身から清楚感が漂っている。夏にはぴったりだ。


「白のワンピースと靴下だけでも無垢さが表れているのに、更にグレーのスニーカーが足されることで、無邪気な子供の雰囲気まで表現されている。素晴らしいコーディネートだ」

「べた褒めだな。……っと、もう9時になるのか、そろそろ出発するか」

「おう!」


昨日のテレビ番組の話をしている滝宮さんたちを呼び、4台の自転車にそれぞれ乗り、出発する。


◆◆◆


俺の家を出発してから、十分後。

ようやく3分の1くらい来たところで、そう言えば、と気になっていたことを新庄に訊く。


「昨日お前が持ってきた自転車、誰のなんだ?」


俺と新庄の前を走る女子2人のうちの片方、滝宮さんが乗っている自転車は、新庄が昨日持ってきてくれた物なのだが、なんというかこう、女子っぽい配色と言うか。

水色のボディーに黄色のラインが入っているだけなのだが、男子が乗るには派手、というか。

どう見ても、新庄の私物ではないと思う。新庄は一人っ子だから、姉妹の物、ってことでもないし。


「ああ、あれは裃さんのお姉さんのだよ。滝宮ちゃんが自転車を持ってきていないって言ってたから、裃さんに頼んで、用意してもらったんだ。お姉さんは車で大学に行っているらしいから、簡単に借りることができた、ってわけさ」

「ああ、そういうこと」


──って、いつの間にそんな会話をしていたんだ、滝宮さんと新庄。


「お前、色々考えてんだな」

「当たり前だろう、俺様を一体なんだと思ってやがる」

「天性のパシリ属性の持ち主」

「ぐっ……反論できない……!」


精神的ダメージを負わせることに成功!

──だけど、まあ。


「ありがとよ、助かった」

「──あっ、デレた!? 今ひょっとしてデレた!?」

「うるせぇよ! ほら、さっさと行くぞっ」

「おう!」


すぐに調子に乗りやがるんだから、こいつは……。


◆◆◆


市民プールへ到着し、俺と新庄は早速男子更衣室へ。

女性陣は、滝宮さんの水着のレンタルをしに行った。

お金は渡してあるから、心配ないだろう。


着替え終え、俺と新庄は先にプールへと来ていた。


「暑い……」

「マジで暑いな、まだ7月なのにねぇ」


この市民プールは、屋外にいくつかのプールがあるのだ。

新庄と2回くらい来たことがあるが、小学生の頃のことだから、ほとんど憶えていない。


「滝宮ちゃん、どんな水着をレンタルするんでしょうね、旦那ぁ。楽しみですねぇ」


至極真っ当な言動だと言わんばかりの真面目な顔で、そんなことを口にする新庄。


「真面目な顔をしても、変態性はバレバレだぞ」

「失礼な、誰がへんた」

「お前」


食い気味で答えてやる。


「せめて言い終わってからにしてくださいぃ! 泣きそうだよ……」

「今は……泣け……」


俺の左隣に立つ新庄の右肩に、ポン、と左手を置き、憐れみ溢れる表情で励ます。


「お前が励ますのはおかしくないですか!?」


む、それもそうか。


「ま、まあ、気を取り直して。……滝宮ちゃん、どんな水着をレンタルするんだろうな」

「最初に戻った!?」


以下、延々同文。


◆◆◆


「おまたせー」

「おまたせしました!」

「お、来た来た」


十分ほど新庄と話していると、滝宮さんと裃さんがやってきた。

──当然だが、水着で。


「……なあ、橋月」

「なんだ、新庄」

「夏って、素晴らしいですね」

「……否定はしない」


小声でそう言ってくる新庄の気持ち、分からないでもない。

滝宮さんは、これまたフリルの付いた、ピンクのワンピースタイプの水着。

その左隣に立っている裃さんは、白黒の縞々の──『ビキニ』。


「ど、どうかな、新しく買ったやつなんだけど……」

「裃さんの雰囲気に、凄く合っていますよ」

「……あ、ありがと」


大人っぽい裃さんに、とても合っている。


「私は、これが可愛かったのでこれにしましたー!」

「滝宮さんも、すごく似合っていますよ」

「そうですか? 嬉しいです!」


──滝宮さん、凄くテンションが上がっている。

『プールに行く』と言った時もすごく嬉しそうにしていたし、プールが好きなのかな。


「さて、それじゃあ……早速泳ぎますか!」

「あ、私も泳ぎますよー! 最初は流れるプールからです!」

「おお、いいねぇ。流れるプールへレッツゴー!」


──滝宮さんと新庄のテンションが、一致している!?

滝宮さん、本当に楽しそうだなぁ。


「橋月君、私たちも……」

「そうですね、俺らも行きましょうか」


俺と裃さんも、流れるプールへと向かう。


◆◆◆


2時間くらい泳いで、時刻は午後0時。

昼食にしよう、ということで、橋月君と新庄君は食べ物を買いに行った。

私と水留さんは、飲み物を買ってきて、既にテーブルを確保していた。


「そう言えば、さ」

「はい?」


午後にどのプールで遊ぼうか、という話をしている最中、唐突に思いついたように、水留さんが話し出した。


「鼎ちゃんと橋月君って、すごく似てるよね」

「似てる、ですか?」

「うん。なんていうか、性格──って言うのかな。まあ、そんな感じ」

「は、はぁ……」


分かったような、分からないような。──要するに。


「雰囲気、とかですか?」

「そう! それが言いたかったの!」


──とは言っても、相変わらずよく分からないけど。


「親戚だから、って理由じゃ片付かないくらい、似てるのよ。……複雑な事情があったり、する?」

「いえ、そういうことはないですよ」


血縁とかとは違う方向に、複雑な事情があるけど。


「ただの親戚ですよ、私と橋月君は」

「そうなの?」

「はい。だから、この話はもうおしまいにしましょう! せっかくのプールなんです、楽しまないと!」


少し強引だけど、話を逸らすことにする。

この話をし続けていると、すぐにばれてしまうだろうから。


「ふふっ、そうね。……あ、戻ってきたみたいよ」

「本当ですね、おーい、こっちですよー!」


私たちがどこにいるのか分からない様子だったので、立ち上がって手を振ってみる。

──と、向こうが気付いてくれた。


「……鼎ちゃん、本当に楽しそうね」

「はい!」


楽しい。

本心から、そう思う。

あっちの世界では、こんな体験、したことがなかったから。

誰かと遊ぶことなんて、なかったから。


「すごく、楽しいです!」


こっちの世界にいる時だけでも、楽しまなくちゃ。


◆◆◆


『映し鏡と現世の!』

 第6話 『市民プールと待ち時間と。』


◆◆◆

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