第3話 探索と、遭遇と。
「お友達、ですか」
「ええ。お願いできますか?」
「もちろんです!」
居間に入り、つい数十秒前に訪れた『招かれざる客』の説明をし終え、ただ今の経過時間、およそ2分。
さすがに新庄たちに説明しきれない、ということを伝えると、滝宮さんは2階の俺の部屋に隠れることを了承してくれた。
階段を上がり、俺の部屋の扉を開ける。
「すみません、俺の部屋なんかに隠れることになってしまって。他の部屋は掃除してないんで、2階ですぐに使える部屋はここしかないんですよ」
「わ、私は気にしませんけど……」
そうは言われても。
「さすがに、俺が気にしてしまうので。では、なるべく早めに色々と済ませてきますので、気になる本とかあったら読んでいてください。……漫画しかないですけど」
「は、はい!」
返事を確認してから、部屋の扉を閉め、1階へと階段を下りる。
──よし、これでばれないだろう。
◆◆◆
玄関の引き戸を開け、新庄たちの様子が特に変わっていないことに安堵しつつ、家へと招く。
「おっじゃましまーす!」
「うるさいな! ボリュームを落とせ!」
「お、お邪魔します……!」
「まだ少し散らかってますけど、どうぞ」
裃さん、なぜか少し緊張気味。
学校でも少ししか話したことないから、変に固くなっているのかも。
「先に居間に行っていてください、飲み物持っていきますので」
「あ、おかまいなく……調子悪くないかな、と思って来ただけなので、お邪魔でしたらすぐに帰りますけど……」
「いえ、そんなことはないですよ。心配してくれてありがとうございます」
……なんだろう、すごい罪悪感。
調子悪くなんてないです、と言おうとも思ったけど、もっと面倒くさそうなことになりそうだったので、やめた。
休んだ理由を、新庄がしつこく訊いてきそうだし。にやけながら。
「この季節にぴったりの、爽やかなお茶をお願いするぜ!」
「はいはい、麦茶持っていくから、居間に行ってろ」
新庄たちを居間へ行かせ、俺は台所へ。
◆◆◆
「しかし、お前が体調悪くするなんてなぁ。俺の知る限りじゃ、そこまで身体弱くはなかったと思うんだけど」
「偶然だろ、狙って調子崩したわけじゃないぞ」
「ま、そりゃそうか。──つーか、元気そうじゃん」
「朝はかなり酷かったけどな。さっきまで寝てたら、かなり良くなったんだよ。でもまあ、大事を取って学校は休んだけど」
……うん、嘘を吐き続けるのって、案外面倒くさい。
直前の発言と矛盾していないかとか、ホントにひやひやする。
「あ、そうそう。忘れないうちに……ほらよ、プリント」
「サンキュー、マジで助かった。えっと……げ、数Aのテスト範囲、若干広くなってるな」
「数Ⅰも広くなってるぜ。勘弁してくれって話だよな……」
「だな……」
男二人で、深い溜息を吐く。
文系には辛いのだ、こういうのは。
「そういえば、裃さんは文系と理系、どっちに進むんですか?」
「あ、私も文系です」
「じゃあ……!」
「はい。範囲広くなると、大変ですよね」
よかった、俺と新庄だけじゃなかった。
──と、『カラン』と氷が解ける音が響いた。
「ありゃ、もう麦茶無くなっちまったな。ちょっと待っててな、今取ってくるから……って、あ」
「ん? どうかしたのか?」
そういえば、さっき淹れた麦茶で、作ってあった麦茶は終わったんだった。
「悪い、麦茶終わったから、自販機で飲み物買ってくる」
「あの、大丈夫ですけど……」
「すぐに買ってきますので、待っててください。それじゃ、留守は任せたぞ新庄」
棚の上に置いていたカバンを持ち、居間の扉を開ける。
「おう! あ、俺はコーラで頼むわ」
「はいはい。それじゃ、行ってくる」
廊下に立ち、居間の扉を閉め、玄関へと向かう。
◆◆◆
「あの、新庄君」
「ん、なに?」
「その……橋月君に、迷惑かけてないかな、突然押しかけちゃって」
「ああ、全然気にしなくていいよ」
むしろ、気にしたらあっちがより気を遣ってしまう、というか。
「橋月の奴、変なところで律儀だったりするから、こういう突拍子もない行動をしたりするんだよ」
「でも、調子悪かったんじゃ」
「ああ、そのことだけど……多分あいつ、調子悪くなんてないよ」
「──え?」
ぽかーん、とする裃さん。
うん、やっぱり気付いていなかったらしい。
「な、なんでそう思うの?」
「簡単な話だよ。あいつは、『どこかへ出かけるような服装をしていた』でしょ?」
「──な、なるほど」
あんな外出用の服装をしているのは、明らかに不自然だ。
「薬を買いに行ったから、とかじゃないの?」
「それはないと思うよ。あいつ、『さっきまで寝てたら良くなった』って言ってたし。薬局は朝早くには開いていないし、そもそもあいつは風邪薬を薬局では買わない。医者に行って、自分にぴったりのものを処方してもらう、って言ってたからね」
「よ、よく知ってるんだね、橋月君のこと」
「そこそこ長い付き合いだから、話す機会があったんだよ」
──さて。
「そうなると、おかしなことが出てくる。『なんであいつは嘘を吐いてまで、学校を休んだのか』ってことだ」
「何か用事があった、ってことだよね」
「ああ、そうだ。サボるような奴じゃないからね。で、さっき外にいた時に、あいつの部屋のカーテンが揺れたのが見えた。探す価値があるとは思わないか?」
今の俺、間違いなくにやけているだろうな。
仕方ないだろう。こんなこと、今までなかったんだから。
「ま、まずいと思うよ……」
「大丈夫だよ。何もなければ、また居間で待機してればいいんだから。さ、そうと決まれば早速、2階に行きましょう!」
立ち上がり、居間の扉を開け、階段へ。
俺の後ろを、扉を閉めた裃さんが、付いてくる。
◆◆◆
「コーラと、お茶2本、あとは……コーヒーでいいか」
適当に見繕って、買い終える。
さて、と。
「そろそろ帰らないと、まずいよな」
探されてしまったら、絶対に見つかってしまう。
◆
「帰ったぞ……って、あれ?」
扉を開け、居間に入ったが、なぜか二人はいなくなっていた。
──と、『ガタッ』と小さな音が、2階から聞こえた。
「──嘘でしょ?」
まさか……いやいや、そんなまさか。
「……気のせいでありますように!」
急いで階段へ向かい、駆け上がる。
◆
俺の部屋へ到着、──したのだけど。
「なるほど、橋月の親戚ねぇ」
「は、はい、そうなんです!」
「よろしくね、鼎ちゃん!」
「よろしくです、水留さん!」
えっと。
──一体どうなってるんですか?
◆◆◆
『映し鏡と現世の!』
第3話 『探索と、遭遇と。』
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