第17話 再会は、奇跡と共に。
夏休みが終わり、1か月が経過した10月、その最初の土曜日、午前10時。
俺は──墓参りに来ていた。
今日は母さんの命日。母さんのお墓にはすでに行き、墓参りを済ませてある。
いつもならそれで終わりなのだが、今日は少し違った。
「──久しぶりですね、父さん」
母さんのとは少し離れた場所にある、父さんのお墓にも来ていた。
◆
かなり汚れていたので、まずはお墓の掃除。
隅々まできれいにした後、線香に火を点け、供える。
目を瞑り、手を合わせて、数秒。
「──父さん」
目を開けて、語りかける。
「あなたはただ、俺の母さんを愛していただけなんですよね」
──我ながら、甘いこと。
普通だったら、恨みつらみをかき混ぜた暴言を吐くところ、なんだろうけど。
そんなことを言ったって、何かが返ってくるわけでもないから。
「恨んでないといえば、嘘になりますけどね」
それでも、俺は。
過去に縛られるわけには、いかないから。
「そろそろ行きますね」
そう告げて、手桶と柄杓を持ち、タオルなどの入ったビニール袋を抱え、駐輪場へと戻る。
もう、振り返らない。
ここからは、未来を見据えて歩くのだ。
◆
自転車を漕いで自宅近くまで来ると、一番の親友の顔が、自販機の前に2つ。
……2つ!?
「おや、橋月じゃないか。久しぶりだ──」
その声を合図にしたかのように、俺はペダルを漕ぐ力を強め、2人の横を走り去った。
「悪い、またあとで!」
「……変わっていないな、橋月は」
「前から比べりゃ変わったさ。橋月ぃ! あとでお前の家に行くからな!」
新庄二人の声を背に、俺は自宅へと急いだ。
◆◆◆
「あの子が帰ってきたこと、伝えそびれたな」
「あの様子なら、そのことは把握しているだろう」
「ま、そうだろうな。しかし見たかよ、橋月の顔。すげぇ嬉しそうだったなぁ」
橋月があんな表情をするようになるとは。──ああ、嬉しいなぁ。
「──おい、鏡の世界の俺」
「なんだ?」
「橋月と滝宮は、好き合っているのか?」
「……うわぉ」
まさかこいつ、そのことを知らないで今まで行動していたってのか……?
やっぱりこいつ、とんでもない天然野郎なんだな。感動すら覚える。
「好き合っていると思うぜ。それがどうかしたのか?」
「自身の別人格と付き合うなんて、世の理から外れている」
「マジで頭固いよな、お前……」
頑固な一面もあること、すっかり忘れていた。
「ま、いいんじゃないのか?」
「なぜそこまで能天気でいられるんだ、お前は」
「ん、なんでだろうな?」
自分の考えをさらさらっ、と頭の中でまとめ、口にしてみる。
「別世界の俺と話してる時点で、俺らも世の理だのなんだのから外れてるんじゃないのか?」
うん、我ながら良い意見だと思う。
「……反論できないな。まあ、そういうことにしておこう」
「渋々、だな」
「俺はまだ、常識に囚われているようでな。時間がかかりそうだ」
「いいだろ、時間かかったって」
俺らには、まだ数十年の時間が残っているのだから。
「ゆっくり受け入れていけばいいと思うぜ」
「……現世の俺も、随分変わったな」
「色々あったからな」
主に裃さん関連で。
「さて、そろそろ橋月の家に戻ろうぜ。11時に裃さん来るんだし、その時にいなくちゃいけないだろ?」
「……? 橋月がいるから、問題ないのではないか?」
「あのなぁ、橋月は今頃、滝宮さんと会ってるだろ? それを邪魔はできないだろうが」
「む、その通りだな」
俺と同じ存在にしては、こいつ、鈍感すぎる気がするんだけど。
「飲み物は買ったし、戻るぞ、鏡の世界の俺」
「ああ、分かったよ、現世の俺」
持ってきたビニール袋にペットボトルのジュースやお茶を入れ、橋月の家へと歩き出す。
◆◆◆
玄関前で自転車を降り、走って玄関まで行き、扉を開ける。
「ただいま! ──おかえり、滝宮さん」
まるで、当たり前であるかのように。
「おかえりなさい。──ただいま戻りました♪」
そこには、幸せが存在していた。
俺の好きな人が、存在していた。
◆◆◆
『映し鏡と現世の!』
第17話 『再会は、奇跡と共に。』
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