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映し鏡と現世の!  作者: イノタックス


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17/18

第17話 再会は、奇跡と共に。

夏休みが終わり、1か月が経過した10月、その最初の土曜日、午前10時。

俺は──墓参りに来ていた。

今日は母さんの命日。母さんのお墓にはすでに行き、墓参りを済ませてある。

いつもならそれで終わりなのだが、今日は少し違った。


「──久しぶりですね、父さん」


母さんのとは少し離れた場所にある、父さんのお墓にも来ていた。



かなり汚れていたので、まずはお墓の掃除。

隅々まできれいにした後、線香に火を点け、供える。

目を瞑り、手を合わせて、数秒。


「──父さん」


目を開けて、語りかける。


「あなたはただ、俺の母さんを愛していただけなんですよね」


──我ながら、甘いこと。

普通だったら、恨みつらみをかき混ぜた暴言を吐くところ、なんだろうけど。

そんなことを言ったって、何かが返ってくるわけでもないから。


「恨んでないといえば、嘘になりますけどね」


それでも、俺は。

過去に縛られるわけには、いかないから。


「そろそろ行きますね」


そう告げて、手桶と柄杓を持ち、タオルなどの入ったビニール袋を抱え、駐輪場へと戻る。

もう、振り返らない。


ここからは、未来を見据えて歩くのだ。



自転車を漕いで自宅近くまで来ると、一番の親友の顔が、自販機の前に2つ。

……2つ!?


「おや、橋月じゃないか。久しぶりだ──」


その声を合図にしたかのように、俺はペダルを漕ぐ力を強め、2人の横を走り去った。


「悪い、またあとで!」

「……変わっていないな、橋月は」

「前から比べりゃ変わったさ。橋月ぃ! あとでお前の家に行くからな!」


新庄二人の声を背に、俺は自宅へと急いだ。


◆◆◆


「あの子が帰ってきたこと、伝えそびれたな」

「あの様子なら、そのことは把握しているだろう」

「ま、そうだろうな。しかし見たかよ、橋月の顔。すげぇ嬉しそうだったなぁ」


橋月があんな表情をするようになるとは。──ああ、嬉しいなぁ。


「──おい、鏡の世界の俺」

「なんだ?」

「橋月と滝宮は、好き合っているのか?」

「……うわぉ」


まさかこいつ、そのことを知らないで今まで行動していたってのか……?

やっぱりこいつ、とんでもない天然野郎なんだな。感動すら覚える。


「好き合っていると思うぜ。それがどうかしたのか?」

「自身の別人格と付き合うなんて、世の理から外れている」

「マジで頭固いよな、お前……」


頑固な一面もあること、すっかり忘れていた。


「ま、いいんじゃないのか?」

「なぜそこまで能天気でいられるんだ、お前は」

「ん、なんでだろうな?」


自分の考えをさらさらっ、と頭の中でまとめ、口にしてみる。


「別世界の俺と話してる時点で、俺らも世の理だのなんだのから外れてるんじゃないのか?」


うん、我ながら良い意見だと思う。


「……反論できないな。まあ、そういうことにしておこう」

「渋々、だな」

「俺はまだ、常識に囚われているようでな。時間がかかりそうだ」

「いいだろ、時間かかったって」


俺らには、まだ数十年の時間が残っているのだから。


「ゆっくり受け入れていけばいいと思うぜ」

「……現世の俺も、随分変わったな」

「色々あったからな」


主に裃さん関連で。


「さて、そろそろ橋月の家に戻ろうぜ。11時に裃さん来るんだし、その時にいなくちゃいけないだろ?」

「……? 橋月がいるから、問題ないのではないか?」

「あのなぁ、橋月は今頃、滝宮さんと会ってるだろ? それを邪魔はできないだろうが」

「む、その通りだな」


俺と同じ存在にしては、こいつ、鈍感すぎる気がするんだけど。


「飲み物は買ったし、戻るぞ、鏡の世界の俺」

「ああ、分かったよ、現世の俺」


持ってきたビニール袋にペットボトルのジュースやお茶を入れ、橋月の家へと歩き出す。


◆◆◆


玄関前で自転車を降り、走って玄関まで行き、扉を開ける。


「ただいま! ──おかえり、滝宮さん」


まるで、当たり前であるかのように。


「おかえりなさい。──ただいま戻りました♪」


そこには、幸せが存在していた。

俺の好きな人が、存在していた。


◆◆◆


『映し鏡と現世の!』

 第17話 『再会は、奇跡と共に。』


◆◆◆

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