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第4話「走馬灯」

「お怪我はありませんか?」


低いトーンでドヤ顔をしながら言う。

あ。そういや、まだサイクロプス倒してないや。

こういうのって倒した後に言うんだよな。


「大丈夫です」


白髪の女性は倒れながら上目遣いでいう。

可愛い。最高かよ。


「あの。うしろに!」


少女は後ろを指差して怯えながら言う。


「ん?」


俺が振り返った瞬間だった。

サイクロプスは右腕を振り上げ、俺の腹部にその強烈な拳をいれる。


「痛っ!!」


俺は10mほど離れた距離にいた。

夢なのに痛い。

口の中では鉄の味がとてもする。


ぶはっ。

咳と同時に血まで吐いている。

どうなってるんだ。

サイクロプスの方に目をやると、一歩、また一歩と俺の方向に歩いてくる。

どうすりゃいいんだよ。

てか力が入んねえ。

腹部を見てみると自分のお気に入りの寝巻きが、血だらけなのがわかる。

視界が徐々にぼやけてくる。


ずしん。ずしん。

近づいてくるサイクロプスに俺はなすすべがないのか。

立ち上がろうとしても、身体に力が入らない。

このままだと殺される。

俺はこの時生きて初めて"死"というものを身近に感じた。

そんな状況でサイクロプスが目の前に来た。

何も出来ない俺を持ち上げて、手で握り潰そうとした。


「うっ。うおおおおお。」


右肩と左肩がくっつきそうになったところで角笛の音が聞こえる。


ブゥゥゥゥ! ブゥゥゥゥ!

音の方に目をやると白髪の少女がそれを吹いていた。

サイクロプスが俺を手から離し、地面に叩きつける。

もうこの時俺に意識はほとんどなかった。

緑色の雑草は赤く塗り染まっていた。

俺、死ぬのか。


「お父さん!これ買って!」


「駄目だ、誕生日まで待ちなさい。」


「お母さんかたたたきけんプレゼント!」


「ありがとね。絢介」


昔の出来事が走馬灯のように浮かんでくる。

何か薄暗い穴底に落ちていくような感覚がした。

そこには妙な孤独感や、悲哀感に包まれた。


「このまま死ぬのか。意味のわからない世界で意味わからない死に方で。」


そんな薄暗い世界の中で少しの小さな光が見えた。

しかしその光はすぐ消えた。

どうやらこれは夢ではなく、本当に死の境目にいるような感じがする。

意識を失ったことのない俺にとってこの状況がいかに怖い事かはわかるはずだ。

そんな薄暗い穴底に落ちていく時に小さな光がまた見えた。

その小さな光はすぐに消えることがなく、徐々に大きいものとなっていった。


「あの!あの!」


目を開けると白髪の女性が俺に呼びかけていた。


「大丈夫ですか?」

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