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第26話「アルフ・スターシア」

俺は剣を右手で持ち、リルムの家から出た。


「うおお!すごい!」


出てすぐ俺の目に映ったのは空の青が街に反射して輝いている村。

夜とは全く違った光景の美しさが視覚を通して感じられる。

俺たちはガルドフさんの家に向かって歩き始めた。


「この村にいる人たちはみんないい人なんです!」


荷台に野菜を乗せて歩いているおじいさんがリルムに声をかける。


「リルムちゃん気をつけて出かけるんじゃぞ」

「はい!」


どこか寂しそうに笑いながらリルムは返事をする。

この村の人たち全員にリルムは好かれているのか。


「リルムお姉ちゃん!こんにちわ!」


楽しそうに遊んでいる4人組の子どもたちが遠くから声を揃えて言っている。

リルムはすぐに手を横に振った。


「リルムって人気者なんだな」

「そんなことないですよ」


人気者の人って絶対にこうやって言うんだよな。

かっこいいとか言ってもカッコ良くないとかね。

まあしかたない。


「まあ他人から好かれるのはいいことだな」

「好かれているのではなく同情されているのでは?」


真剣な表情で俺を見つめる。

その目は俺に何かを訴えているようだった。

何か言ってあげたいという気持ちは山々だが言葉が出なかった。


「つきました。ここがガルドフおじさんの家です」


沈黙の中歩いているといつの間にかガルドフおじさんの家の前まで来ていた。





ガルドフの家はほとんどリルムの家の造りと同じであった。

何かリルムにかけられる言葉があれば……

絶対昔のことを気にしているんだよな。


「ガルドフおじさんいますかー?」


リルムは木製の大きな扉を3回ほどノックをする。

するとすぐに家の扉ががすぐに開き、俺たちをガルドフさんが出迎えてくれた。


「おお。来たか。入りな入りな」

「お邪魔します」


気まずい雰囲気の中俺たちは家へと入っていく。

家の中の構造も同じであり、リルムはリビングではない1つの部屋に入る。

靴を脱ぐ際玄関の壁には昔のガルドフさんであろうと思われる写真が飾られているのが見えた。

この時のガルドフさんはとても若く髪の毛だってフサフサだ。

いや、別にガルドフさんをバカにしてるわけじゃなくてね。


「シュン君早くあがってきなさい」


俺はガルドフの声がしたリビングへと足早に向かう。

決して綺麗とは言えないリビングである。

だが、それが俺の緊張していた体をほぐした。

ガルドフはがたいにあわないような小さな声で俺に話しかける。


「シュン君。今リルムは弟のアルフの寝ている部屋にいるんだ」


なるほど。

さっきリルムの入っていった部屋というのは弟が寝ている部屋ということか。

確か弟って呪いをかけられているんだっけか。


「リルムは幼い頃に親を亡くしてしまった。シュン君も親がいるんだからもしそうなったらってことを考えればリルムの気持ちだってわかるはずだ」


幼い頃に両親が目の前で殺されてしまったなんて悲惨すぎる。

現実世界でも生物は不平等とよく言っていたがこの異世界でもそれは同じなのか。

リルムの気持ちを考えると胸が苦しくていっぱいになった。


「同情しろとは言わんが、そういう話については何も触れないで話してあげてくれ」

「わかりました。でもそれではずっとリルムが苦しんでしまうんじゃないですか!」

「まあそうだが、なにもできることがないんだよ」


俺は真剣な眼差しでそう言われたため、返す言葉がなかった。

俺に何かできることはないのか。

少しでもその悩みを緩和することさえできれば。

シワの多いガルドフはもっとシワを多くして笑って俺を見つめた。

ガルドフは俺の両肩に手を置いて、俺を180度回転させ全くガルドフが見えなくなった。

俺が後ろを振り向こうとした時にガルドフは俺の背中を強く押した。


「ほら。いってきな」


背中を押された俺は転びそうになりながらも態勢を取り戻して歩き始めた。

ガルドフは俺にリルムのいるところへ行ってこいと言っているのだろう。

そして俺は床の軋む音を立てながらリルムの元へと向かった。





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