第16話「闇の中の自分」
リルムの方に視線を逸らした時、リルムと目があった。
するとリルムは、俺の視線から目を逸らすように後ろを向いた。
その時の耳は真っ赤であった。
リルムさん助けてくださいよ。
一番あなたがカップルじゃないとわかってるはずですよね。
あーもう。どうすればいいんだよ。
ガルドフおじさんめっちゃくちゃ俺のことガン見してるし。
「あ、俺は…」
その言葉を言った時俺の頭が真っ白になった。
徐々に視界が暗くなり、ガルドフおじさんの顔が二つに見え、体の力が全て抜けた。
「なんだ、これ…。」
俺は、どこを見ても何もない暗い世界でたたずんでいた。
その暗い世界で、孤独感で押し潰されそうになった。
なんで俺はこんなとこにいるんだ。
心臓の鼓動のペースが徐々に早くなる。
何もしていないのに、呼吸困難のような現象に襲われる。
息苦しい。そう思った時だった。
「これは君が望んだ世界なんだ」
突然背後の方から、男の声が聞こえた。
何も見えない恐怖と背後から狭まる恐怖が、俺の精神状態を異常なまでにしようとしていた。
声がしている方を見ようとすると、本能的に見られない自分がいる。
もしここで振り返ってしまえば、俺が俺でいられなくなる気がした。
呼吸が乱れながらもなんとか言葉を返した。
「一体ここはどこでお前は誰なんだ!俺はこんな世界望んでない!」
「僕は君であり、君は僕なんだ。だから僕が望んだ世界だから君も望んでいると同じなんだ」
突然意味のわからない事を俺に似た声で話した。
何を言ってるんだ。
頭が痛すぎる。
俺がこいつでこいつが俺ってどういうことなんだ。
呼吸が先程よりも苦しくなっていく。
深呼吸。また深呼吸。
「じゃあ俺が今、この暗い世界をリルムがいた世界に変えろと言ったらどうする。それが俺の望む世界だ」
「僕が望んだ世界を否定する僕なんていらないんだ」
男がそう言うと俺は無意識に右手に力が入っていた。
何言ってるかわかんねえよ。
さっき異世界転移したと思ったらいきなり、また転移して、今度はこの絶望した世界かよ。
光もなければ、自分たちの声以外の音すらない。どんな世界だよ。
いるのは俺と、俺の偽物だけなんだ。
誰が何のために何の用で俺にこんなことをするんだ。
もう俺には何も考えられない。
「じゃあ。もうさよならだね。短い時間だったけど、もう一人の僕に話せて楽しかったよ」
その声が聞こえると、背後の気配が消えた。
「おい。どこにいるんだ!どこへいった!」
そう怒鳴っても返事すらない。
どうやらこの暗い世界で本当に一人になったらしい。
その時、俺の前に一寸の光が見えた。
「…。」
どこから囁くような声が聞こえてくる。
「シュ…ン…シュン。」
徐々にその声が大きくなっていく。
「シュン!」
暗闇の中から出ると、リルムの姿がぼやけて見えた。
暗闇から出たのか。