第15話「ガルドフとの約束」
「そして、わたしが・・・。」
続きを話そうとした時だった。
「おーい。いるかー?」
扉の向こうから男性の声が聞こえた。
帝国軍じゃないよな。
もし帝国軍ならリルムを助けられるのは俺しかいない。
俺は机から立ち上がり壁に立てかけてある剣を持ち玄関に向かった。
「今の声はガルドフおじさんよ!」
リルムがそう言うと扉が開いた。
「リルム~、な、なんなんだ?」
おじさんは驚いた様子で言った。
この人がリルムの言っていたおじさんだったのか・・・。
「え、あ、すいません!」
俺は剣を後ろに隠して頭を下げた。
するとガルドフは高らかに笑った。
「ハハハ、謝らなくて大丈夫だ。でも何で剣なんかもっていたんだ?」
そこで俺は剣を持っている理由を説明した。
「てっきり、てーこく軍が来たんじゃないかと思い、リルームを守るために剣を持ちました。ほんとに申し訳ないです!」
焦りすぎていたせいで、舌が回らず単語の一つ一つの発音がおかしくなった。
コミュ症ではないんだけど、やっぱり
焦ってるときは滑舌が悪くなるんだよな。
唯一普通に言えたのは「申し訳ないです。」だけだったな。
「なんだそういうことだったのか。」
ガルドフは顎を手に置き、俺の身体を舐め回すように見た。
なんか申し訳ないことしたな。
「それにしてもリルム。なんでこの子はこの家にいるんだ?」
リルムは右手を胸に当てて言葉を返した。
「シュンは。わたしの命の恩人です。。昨日、薬草を摘みに行った時にサイクロプスと出会ってしまい、襲われているところを助けてもらいました。それで傷を負ってしまい、私が勝手に家に連れてきました。」
なんか話盛られすぎてる気がしてやまないのだが。
いきなり変な世界に転移して、リルムは行くあてもなく殺されかけていた人を助けてくれているんだから助けられているのは俺なんだけどな。
俺は手を後頭部に置き、すこし笑いながら話した。
「いや、俺が助けられたんですよ。助けようとしたら逆に俺が助けられちゃって。ほんと男として情けない限りですよ」
するとガルドフは、眉間にしわを寄せて俺の方へ近づいてきた。
なんで近づいてくるんだよ。
しかもガルドフおじさん顔がめちゃくちゃキレてるし。
ガルドフは、息が届きそうなところまで来た時、右手をふわーっと上げた。
殴られる。
そう思った瞬間だった。
俺の左肩に、すこし生暖かくずっしりとしたものが乗った。
「シュン君と言ったか。リルムを助けてくれてありがとうな。これからもリルムが心配をかけると思うがお互いに支え合っていくんだぞ」
ガルドフは嬉しそうで寂しそうな目をしながら俺を見た。
なんかガルドフおじさん勘違いしてない?
これってリルムと付き合ってると思ってるんじゃないか。
しかもガルドフおじさん体にあわない手のゴツさしてるし。
「俺は…」
言葉を話そうとした時だった。
「リルムを頼むよ」
切れ味の良い刀のような鋭い眼差しで俺を見た。
まあ確かにこんな美少女で、性格もいい子なら彼女にできますけど俺とは全然釣り合わないよ。