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第14話「知られざる過去」

・・・数年前の雨の日の夜に起きた。・・・


突然、家に帝国軍がやってきたのであった。


「帝国軍のものだ、早く金をだすんだ」


リルムの父親は言われるがままに玄関から出て金を差し出した。

ここまでなら税収めをするだけの日常的なことだった。


「あーれー?少ないなあ。全然足りないなあ?自分で数えてみろ」


帝国の騎士団はお金を地面に投げつけ、鋭い眼で父を見た。

いつも渡す税は100ギルである。

リルムの父親は地面に落ちたギルを拾い、それを懸命に数えた。


「100ギルあります。数え間違えはありません」


税をもう一度渡そうとした瞬間リルムの父親は腹部を殴られた。


「わりいなー。今日は上からごちゃごちゃ言われて腹が立ってんだよ、今日はいつもの十倍よこせ、残った900ギルでみんなで酒でも飲みに行こーぜ」


それをドアの隙間から見た母親は外に飛び出した。


「あなた!」


母親はリルムの父親に近づいた。


「おやおや?カミさんが出てきたぜ。やっぱエルフは偉い美人さんだな。

こいつはオークの闇商人たちのところにでも売ればいい金になるだろ。」


ローブを着た男が笑いながら言う。

この時の平民の月収はおよそ150ギルであり、普通の家庭にはそんな金を払える余裕などない。


「そんな金なんてない。」


父親は口から血を吐きながらも言った。


「あなた、」


「夫婦ラブラブなところ見せてくれるねー。お金ないなら殺しちゃおうかなー?」


「男を殺して、女の絶望した顔を見ようぜ」


鎧をつけた二人組の男が高笑いをしながら返事をした。


「それなら女はさらって。男は一生働かせるでいいんじゃねえの?命令に背いたんだからよ!」


また別の男が言う。


「俺にはどんなことでもしていいから嫁だけは助けてくれ」


リルムの父親の髪を強く引っ張り、地面に叩きつけた。


「じゃあ税払えや」


リルムと弟は、それを扉の隙間から覗いていた。


「お金はないんだ。今度来てくれ。」


父親がそういった瞬間だった。

スパンッ。と音を立てて父親の首が飛んだ。

扉の隙間から絶望と悲しみの表情のままこちらをじっと見ている父親の顔がみえた。

帝国軍に気づかれないように、リルムは泣きそうな弟の口を押さえた。


「アルフ、声を出したらだめ。」


そういうと弟は、泣きそうになりながらも縦に首を振った。


「そういうのはうぜえんだよ」


そういって男は父親の体を蹴り始めた。

それを見たアルフはリルムから離れ家から飛び出した。


「ぼくのパパに。よくも…。ぼくのパパを!!」


そういって帝国軍の、父親を蹴っている男の足にしがみついた。


「なんだこのクソガキ。離しやがれ!」


そういって足にしがみついているアルフを殴り続けた。

しかしアルフは決して離そうとはしなかった。

それを見たリルムは、恐怖で足がすくみ、ただ呆然と見ることしかできなかった。

すこしすると足にしがみついていたが、地面に崩れ落ちた。

しかし腕だけは離そうとはしなかった。。


「おい魔術師。こいつに死の宣告デスカウント」をかけてやれ。死ぬまで苦しんでいろ」


男は息を切らしながらそう言った。


「カースマジック。死の宣告デスカウント」


ローブを着た男が、ぼそっと呟いた。

すると男の周りに魔方陣ができ、死霊のようなものが集まった。

杖をアルフのほうに向けると、死霊は弟を囲った。


「やれ。」


ローブを着た男がそう言うと死霊たちはアルフの体に入っていった。

アルフは突然悶え苦しんだ。


「苦しいか?お前が俺様にたてつくのが悪いんだよ。お前は死ぬまで苦しみ続けろ」


男は笑いながらいった。

リルムはアルフの姿を扉の隙間から見るとそれに怯えてベッドの下に隠れた。

リルムの頭の中は"恐怖"でいっぱいだった。


「助けて…。助けて…。助けて…。」


リルムはふっと意識が途絶えた。

雨が止みリルムは玄関を開けると、父親の死骸が無残に転がっていたが母親の姿はなかった。


「お父さん。お母さん。」


リルムはその場で泣き崩れた。


「お姉ちゃん!」


どこからかアルフの声がする。

死骸の右側にアルフが倒れているのがわかる。

とてもやつれた顔で血の気がが引き血反吐を吐いていた。

アルフの姿はまるで別人のようであった。


「アルフ!!」


リルムは言葉にならない声で叫んだ。

苦しそうな顔で弟は返事をした。


「大丈夫だよ。お姉ちゃん。」と。


「全然大丈夫じゃないじゃない!」


ふと涙が落ちる。

できるだけの笑みを浮かべて目を閉じた。


「なんで私の家族がこんなことになるの!」


彼女は気が狂った様子で嘆いた。


「お母さん・・・。お父さん・・・。アルフ・・・。」


大きな声でリルムは泣きじゃくった。

その声に気がついた村人たちは外に出てきたがその光景を見たまま誰も近くには寄っていかなかった。

それに気がつき、村人に、助けて。と嘆かけた。

その思いは伝わらなく、ただ時間だけが経っていた。

先ほどまではこちらを見ていた人々の姿が徐々に消えていった。

そして後ろからトーンの低い声が聞こえてきた。

リルムが後ろを見ると、そこにはおじさんがたっていた。


「お譲ちゃん、なにがあったかはわからないがとりあえず今は家においで。」


「でも弟が・・・。アルフが・・・。アルフを助けて・・・。」


リルムはおじさんの服の裾をつかんでいった。

するとおじさんはリルムを強く抱きしめて言った。


「お譲ちゃんはよくがんばった。後はわしに任せなさい。」


リルムはその安心から睡魔に襲われ眠りについた。

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