第8話「信頼と戦略」
これはお互いに信頼してないとできない。
俺が木に登った後、リルムが笛を吹かずに俺を囮にすれば俺は死ぬ。
逆に、上の俺がなんらかによって逃げてしまえばリルムが死ぬ。
要するに、信頼関係がとても重要なのである。
俺は助けてもらった身なため、信用できるが、リルムが俺を信用できるかわからない。
「俺を信じてくれるのか?」
「もし、シュンが最初に私を助けようとしてくれなかったら私は死んでいたと思います。私は助けてもらった身です。信用できないわけがありません」
さすがエルフ。
頭が冴えているな。
でももしこれで俺が失敗してリルムが死んだらどうする。
いや、そんな事考えるな。
俺はこの剣、いや聖剣ならなんでも勝てる気がする。
これはフラグではない。
この剣を持つとどこか勇気がみなぎるみなぎるのだ。
もし、この剣を触っていなかったらボコボコにされたままで終わるだろう。
でも万が一の事は考えておかないと。
これだ!
「わかった。リルムが信用してくれて嬉しい、ならこういう作戦でいこう。まず角笛を吹いてくれ。そしたら少しサイクロプスが来るまで待ち、肉眼で確認できるようになったら、そこに泉が見える。そこに逃げてくれ。サイクロプスがリルムに夢中になっている所で俺が木から飛び降りてこの剣を目に刺す。さっきのよりもこれのが具体的でいいはず」
俺は厨二病そのものだった。
こんな長文を話せるのは厨二病のほか全くいないはずだ。
台本でもこれは噛むレベル。
「わかりました。でもその身体では木を登ることができないのでは」
「大丈夫。今やらないとダメな気がするんだ。このまま放っておいたらほかの人にまで手を出すんだ。それれなら俺が仕留める」
俺は初めてこの時、人に思いやりということをすることができる気がしたのだ。
「なら、剣は私が持っておきます。登り終わったら投げますのでとってください。」
「すまないな」
「それではそこの大きな木に登ってください」
リルムが大木に指を指す。
俺は指を指した大木にしがみついて這い上がるかのように登っていった。
サイクロプスから受けた攻撃により、もう身体はボロボロだった。
身体はボロボロになったが、精神面はサイクロプスに会った時よりも余裕が出てきた。
それが俺の動ける理由である。
「よし、登ったぞ。剣を投げてくれ。」
リルムは聖剣を両手で持ち、非力な力ながらも精一杯、上にめがけて投げた。
俺はそれを掴み、足場が安定してリルムのことが見える場所で待機をした。
「それじゃあ笛を吹いてくれ!」
俺はリルムに向かっていった。
「わかりました。吹きます!」
ブーウー!ブーウー!
角笛の音が森林一面に響き渡る。