初狂 7
三郷から話された内容は正直ひどいと思う。自分の選択肢を与えられないのは人間の生き方ではない、だからここで私が言わないといけない気がした。
「三郷・・・・ここからにげよ」
いきなり言われたもんだから三郷が理解できなかったらしい。三郷は天然なところがあるから仕方ないことだと理解しておいた。
「こんな不自由な場所よりもっと自由な所に行こ!」
こんな提案に乗るわけもわかっているのに三郷に何言ってるんだ私は?
「大丈夫、私には貯金はたくさんあるからしばらく二人で過ごせるよ」
貯金は40万円。親戚のおじさんから来るお金を貯めていたから安心。
早く連れて行こうとしたとき三郷は無表情で正論を述べた。
「逃げれると思っているの?いま近くに一人付けているのにあなた気付いた?それでも逃げれるとおもっているの?」
それには気づかなかった私ではないがそれでもなんとかしたい気持ちは本当なんだよ
「それに私があなたの言う不自由な場所以外に暮らせると、こんな化物と暮らせるの?」
なんだろ、いままでの罵りは正論だから言い返せなかったから何もいいわなかったが、さっきの発言はイラついた。
自分が化物・・・・なんでそんなことを言えるの!!
か弱い右手で思いきり頬を叩いた。
「だめだよ!!自分を化物なんか言っちゃダメ!!」
「でも私はあなたの左手を――――。」
「それでもダメなんだよ!!例え普通の人とは違うところがあっても自分は人間であろうと努力しないとダメなんだよ!!」
杏は三郷の話なんて関係ない。だってそれじゃ生まれてきたのが罪があるみたいで嫌に決まってる。
常識なんてスローガンみたいな物でみんながみんな目指してるわけじゃないのに常識から少しズレただけで異常者扱いは可笑しいよ!
杏のこの執着心は自分でも可笑しいと思う。だが杏はこのことだけは譲れないのである。
ここで杏は疑問する。
なんで普通を目指す?
さっき自分が言ったように自分は普通で思えばいいと思えばいいはず
普通じゃないといけない理由があった事を忘れて―――。
背中から熱いものが突き刺さり後ろに倒れこむ。
銃で撃たれたことを理解するのに時間は必要じゃなかった。痛いのだからなんでもいい
そんな私を三郷は無表情ながらも見つめていた。