初狂 3
十八時四十三分
デパートから出ると既に暗くなっていて杏は初めて友達と遊んだ気がした。
「三郷さんは遅くなって大丈夫?」
杏は三郷三郷の心配した。すると無表情ながらも答えてくれた。
「大丈夫、遅くなっても、後三郷でいい」
三郷は無表情だとしても声のトーンでなんとなく分かる。今回が彼女の起点とは言いがたいけど学校生活をしてもらいたい。
「すごく遊んだしそろそろ帰ろっか」
「あみちゃんもそれでいい?」
友達二人が本当に友達と思えたのは杏は初めてだった。だから三郷のおかげで私も救われた。
「三郷はどうする?」
だからこれからもこの4人で集まって一緒に遊びたいと心から願える。
「そうだね、さすがそろそろ帰らないと」
そしてこの日をわすれない。
?
一人の帰り道、杏は昨日のドラマのDVDを貸してもらう約束を思い出して先ほど友達二人と三郷が分かれたところまで走った。
もちろんその場にいないのは想定内だった。だがそこには普段感じない日常の臭いを感じた。
まず友達二人と三郷が向かった方に近づく、臭いが近づいてくる。臭いが気になり始めていく。
すっと足を止める。隣の細い道に臭いの発信源があることが直感で分かる。細い道の先には不幸を悟る。
一歩ずつ前にすすむ、出来るだけゆっくりと考えてるのに早くなってしまう足、落ち着けと心に言い聞かせているのに急がせる汗、理解しても止まらない思いが自分を追い込む。
臭いがきつくなっていてやがては体に染みこむような気がして恐ろしく逃げたかった。
今まで暗い視野が進むごとに現れてくる。アスファルトに不自然の赤い点がある。
赤い点が多くなる。
赤い点が大きくなる。
赤い点がなくなり赤が広がっていく。
視野に飛び出たのは横たわっている人。おそる、おそる近寄る。最悪のケースしか考えられないが希望は最後まで・・・・。
内臓が丸見えで多分もだえてた体は力が抜けていた。元気だった友達の一人は死体になっていた。
「あなたも来たのね」
後ろから話しかけてきたのは同じ制服で長い綺麗な黒髪の女の子。
「み、三郷・・・・」
血まみれの三郷が杏に近づいてきた。
「ちょっかい出すのはいいけどその子みたいになるよ」
無表情でさらに声のトーンで威圧される。疑問だけが杏の脳で処理できなくなっている。
「三郷はここでなにをしているの?」
「口で説明より見たほうがいいよ、ついてきて」
そう言うとどこかに行ってしまう三郷に付いて行く。
「死体はどうするの」
「勝手に処理されるから大丈夫」
後ろを振り向くと既に死体はなくなっていた。