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『十一月二十日 晴れ』
文化祭にて、有志の出し物として行った演劇は大好評だった。
脚本は、カズマが行った。意外な才能と云うべきか、いや、むしろ――。
「ユーリをヒロイン役にするあたり、素直だね」
「ほっとけ」
僕の突っ込みに対して、リアルパンチで突っ込みが返された。
ちなみに、主役はヒロだった。
文化祭で行う身内に向けた出し物であるから、アイドルとして知名度の高いユーリと生徒会長として顔の広いヒロを起用するあたり、正しい戦略だろうか。
最初に脚本を渡された時、ヒロは奇妙な表情になっていたけれど。
「どうしたの?」
「わざとらしいぞ。にやにや笑うな」
筋書きは、王道を反対にしたもの。
自由のない王子様役のヒロを、自由奔放な異郷の出身者役であるユーリがさんざん引っ張り回して、感化していくというもの。互いの微細な変化の調子が、よく出ていた。
やがて戦火に包まれていく街で、ユーリが王子に「生きて」と語りかける瞬間。
彼女は数秒間、痛切な表情になって、たっぱりと間を取ったけれど――。
「名演ね」
「そうだね、あるいは……」
ナオの感想に対して、僕は笑った。




