32/34
『十一月三日 晴れ』
ミズキが、また水着姿だった。
「さすがに、寒いだろ?」
僕は驚いて云った。
十一月に入って、まだまだ肌寒いとは云えないが、半袖の似合わない季節になってきている。そんな時期に、学校のプール近くの廊下で、水を滴らせた水着姿。本当、この娘、何をやっているのだろうか?
「なんか、もうちょっとなんだよ」
煮え切らない表情で、ミズキはつぶやく。
しきりに首を傾げていた。
「もうちょっと? なにが?」
僕は尋ねる。
「水にぷかぷか浮いている感じ……なんか、大事なこと、思い出せそうなんだ」
なるほど、漂うイメージということだ。
どうやら、彼女もゴールに近づいている様子。




