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勇者×3+魔王+竜+姫=∞  作者: シロタカ
転の秋『七番目の主人公』
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『九月十四日 曇り』

 カオルについて、あれこれ。

 まず、ナオミ、ミズキ、ユーリという女性陣三人は、ヒロインとして落第である。

 云ってしまった。

 僕に、明日はあるだろうか。

 戦々恐々としながら続けよう。彼女達は、確かに可愛いし、美しい。ユーリはアイドル稼業などに手を染めて遊んでいるけれど、ナオミとミズキも十分、似たような仕事で金を稼げるはずだ。つまり、見た目だけならば、ヒロインクラスとして合格点である。

 問題は、内面。

 彼女達には、恥じらいがない。

 その点、カオルは見た目も中身も、完璧だ。唯一の欠点と云えば、カオルは女ではなく男ということであるけれど、まあ、些細な問題ではないだろうか。

 そのヒロインとしての可能性の確認のため、本日の成果を報告しよう。

 神の見えざる手で運命操作。

 わかりやすいトラブルを招いてみた。

 最初、休み時間の廊下にて、曲がり角、カオルとナオミを衝突させてみた(さらりと書いているけれど、このレベルの二人をわざとぶつけ合うなんて、本来、至難の業だ)。

 もつれて転んだ拍子に、カオルがナオミの胸を触るような感じ。

 両者の反応は面白いくらいに異なった。

 カオルはわかりやすく赤面。動揺がそのまま言葉になり、「あ、く、黒川先輩、ご、ごめんなさい。え、あれ、どうして……?」と、思わず抱きしめたくなる可愛さ。

 一方のナオミ。

 ゆっくりと振り返り、腕を軽く振り上げた。鋭利に細まった瞳は赤く、魔王のような邪悪さ、竜のような威圧感、あるいは勇者のような猛々しさ。げらげらと笑っていた僕も、思わずぞっとした。

「反省しなさい」

 彼女は云い放ち、腕をギロチンのように振り降ろす。その影が蛇のように、細く、地を這い、僕に襲いかかった。そうして、あっさり首を刎ね飛ばされる。

「普通の人間だったら死んでた」

「……あなた、神よ」

 生首を片手に抱えながら、青ざめる僕に対し、あくまで辛辣なナオミ。

 いやはや、容赦ない。

「ちょっとぐらい、真面目にやるべきよ」

「説教? 僕はいつでも真面目だし、本気だよ」

 彼女から逃亡し、今度はユーリで仕掛けてみた。

 彼女が着替えている教室の扉を、偶然、カオルが開けてしまうというもの。もちろん、その偶然は、僕が途方もない奇跡を積み重ねて生み出したものだ。

 相変わらず、カオルは赤面して素晴らしい反応。

 相変わらずね。

「お気になさらず、浅葉先輩」

 ユーリと云えば、微塵の動揺も見せず、ゆらりと淑やかな仕草で前を隠しつつ、カオルへ微笑みかけた。直後、邪悪なる神のような、地獄の底からにらみ上げるような目つきに変わり、「さて、代償として、何を頂きましょうか?」と、僕に声かけた。

「冗談です」

「冗談で、私の裸体を晒すと?」

「いえ、もちろん、描写は一文字もしておりません」

「描写? とにかく、言葉だけでなく、具体的な形で誠意が見たいですね」

 ナチュラルに、首を絞められた。

 片手で、ぎちぎちと。

「怖いです」

「私は、恥ずかしい」

「そういう台詞は、カオルみたいな表情ができるようになってから云ってほしい。少しは恥ずかしそうな表情もしてよ。描写がやりにくくて仕方ない」

 僕の台詞に首を傾げつつ、ユーリ。

「意味がわかりませんが、とりあえず……爆ぜろ」

 お言葉通り、僕は爆発しました。四肢爆散。

 本当、ただの人間だったならば、確実に死んでいる。

「正直、神でも死ぬのは辛いんだよね」

 三度目の正直。

 すなわち、本命とも云うべき、ミズキでチャレンジ。

 結果を端的に云うならば、見事な失敗であり、僕は正座して先の台詞を吐いている。土下座、地面に頭をこすり付ける。「どうか、命ばかりは……」と、悲鳴をあげる。「許してやれば?」と、のんきな声で云うのはミズキであり、無言のまま、僕の目の前で仁王立ちしているのは、カオルだった。 

「云いたいことは、それだけ?」

 怖い。

 普段、滅多に怒らない人間が怒った時ほど、怖いものはない。

「ご、ごめんなさい」

 場所は、体育倉庫。

 登場人物は、僕、カオル、ミズキ。

 諸々どうしてこうなったのか、細部の事情の説明は省くが、全員、裸だった。

 僕は最近、どうにも根本的なことを失念する傾向にあるらしい。今でも当然、神の役所はそのままなのだけど、物語の記述者から、語り部としてのキャラクターに堕ちてきたゆえに、生身を伴い、世界に存在するというあたり前を、忘れがちなのだ。

 本当は、仲睦まじいカオルとミズキを、さらに睦まじくさせるため、裸にして、二人きり、体育倉庫に監禁してやるつもりだったのだけど、悲しいかな、語り部たる僕は、欲を出してそのラストまで書いてやろうと思ったものだから、舞台に紛れ込んでしまった。

 馬鹿なミスである。

 それと、僕まで裸になる意味はない。

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