Act18 通学
「絵美ちゃんって電車で行ったところにある公立高校に行ってるんだよね?」
「うん、そうだねっ」
「毎朝電車で行くのめんどくさくない?」
「そんなことないよ。電車好きだもん」
「へえ、そうなんだ。ほら、朝は混むじゃん?僕は満員電車が嫌いでさ」
「うん?朝って混むのかな?」
「あれ?さすがにこのあたりが田舎でも朝は通勤とか通学のラッシュがあるでしょ」
「絵美は知らないよ。絵美の周りはいつも誰もいないもん」
「へえ、穴になってる時間があるのかな?」
「あっ、そういえば隣の車両はいつもぎゅうぎゅう詰めだね。絵美の乗ってる車両はほとんど絵美しかいないよ」
「スタンガンだ!絶対スタンガンのせいだ!!」
「ええ~、スタンガンってそんなに痛くないよ。絵美は知らないけど、タァ君はそう言ってたもん。毎朝起こすときに使うけど笑顔で許してくれるもん」
「それは間違いなく笑うしかない状況だからだよ!・・・絵美ちゃんそのうち絶対警察に捕まるよ」
「警察?あっ、一回声掛けられたな」
「ほら。・・・って、あれ?声掛けられただけ?」
「なんかすごく怒られたけど、最後には大声で謝りながら「許してください」って言ってたよ」
「・・・・・・」
「どうしたのコウタン?」
「僕の人生はどこで間違えてしまったんだろう。どうしてこの子に出会ってしまったんだろうか」
「どうしたの?なんでそんなナレーション口調なの?そんな時はショックを与えれば治るらしいよ」
「絶対誰もそんなことは言ってないはずだ!」
「大丈夫、ちょっとバチッていうだけだから」
「絵美ちゃんにとってはね!こっちはバチッじゃ済まないんだよ!いや、ちょっと本当にやめて・・・!!」
「あ、電池切れだ・・・」
「ああ、本当に死ぬかと思った。生きてるって素晴らしいなあ」
「残念」
「絵美ちゃん。今度から僕といるときはスタンガンは僕が持つ」
「ええ~、やだー!」
「やだじゃない!駄目だっていうならもうアイスおごってあげないよ」
「うう~、わかったんだよ。しょうがないんだよ。背に腹は代えられないんだよ」
「なんでこの子こんなにアイスに動かされるのか・・・」