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Act11 褒め合い

「そろそろ漆根君をけなすボキャブラリーも折り返し地点に達してきたわね」

「こんだけ僕をけなしといてまだ半分もあるのか。間違いなく春日井さん一生のうちに毒舌で5人は殺せるよ」

「まさか。私は普段毒舌は封印しているのよ。基本的に漆根君にしか使わないわ。漆根君にだけ、特別に使ってあげてるのよ」

「・・・それは嬉しくない特別だな。相手を選ぶってことだよね?」

「まあ、そうなるわね。だって、嫌われちゃうじゃない」

「それは僕には嫌われてもいいってことかっ!?折り返して更に進んだな・・・」

「それどころかゴールしてももう一回走っちゃうわ。84.39キロマラソンよ」

「そんな、ボディーブローな・・・」

「でも漆根君は殴られても平気なんでしょ?超軟体動物だから」

「超軟体動物ってなんだ!?僕はぬめぬめしてないぞ」

「してるわよ!ぬめっとしててねとっとしててふにゃふにゃしてるじゃない」

「・・・ってこれ前にも聞いたことある!!なんでもうリスタートしてるの!?なにその早すぎるフライング」

「確かにそうね、お弁当を食べながらお菓子なに食べようか考えているようなものね」

「いや、確実に弁当食べながらお菓子つまんでたよ、今」

「つまりそれは、漆根君をいじめるのが人生のスイーツだと言いたいのね?」

「言ったのは君だ!」

「やれやれ、話が進まないわ。これだから暇人は・・・」

「更に一歩を・・・。それに進める話でもあるのか・・・?」

「だからこの辺で一回横道にそれてけなし合いならぬ褒め合いをしてみようと思うのよ」

「けなし「合った」ことは今がかつて一度もないけど、褒めあってどうするの?」

「これはゲームよ。相手の褒め殺しに耐え切れなくなったほうが負け」

「いいよ。いやな予感しかしないけどやろう」

「罰ゲームはそうね・・・リコーダーを・・・」

「相手のを舐めるの!?それとも自分のを舐められるの!?そもそも僕にそんな願望はないし、春日井さんも嬉しくないだろうし、もう高校生にもなるとリコーダーなんてどこにしまったかも分からないし、いいことないよ?」

「早とちりね。この私がそんなこと提案するわけないじゃない。まさかそんな願望があるのかしら?」

「不愉快な発言だ!・・・でもさ、ほかにリコーダーの使い道なんてあるの?」

「・・・うん、その発言に漆根君の変態っぷりが集約されているといっても過言じゃないわね。まさか中学時代にやったりしてないわよね。もしそうだったら私明日から転校するわ」

「大丈夫、僕にそんな度胸はない!正直自分のリコーダー舐めるのも恥ずかしいくらいだ」

「・・・明日から学級閉鎖にならないかしら」

「学級閉鎖か~。僕のいるクラスって小中の9年間毎年閉鎖されてるんだけどさ、僕だけは一度もインフルエンザに罹ったことないんだよね。なんでだろ。リコーダーにウイルスでもついてたのかな」

「・・・つまりあなたは結局一度も自分のリコーダーを舐められなかったのね。漆根君を見誤っていたわ。いや、見くびっていたわ・・・」

「えっ、そんな精神的にも物理的にも引かないでよ。せめて10メートルの距離を6メートルに縮めて会話しない?それで、結局罰ゲームはなに?」

「そんな変態っぷりを聞いてしまった後では何のインパクトもないのだけれど、夕飯を箸ではなくリコーダーを使って食べるのよ。家族に理由を聞かれたら、「負け犬なので罰を受けている最中です」と答えるのよ」

「ええ~~!発言はともかくリコーダーで!?そんなの一生ものの恥だよ。下手したら家族に笑いものどころか瞬時に縁を切られるよ!」

「まさか、あなたの家族も異常なの・・・?」

「でもさ、春日井さんが負けたらそんなこと言うの?言えるの?」

「そうね、私にその苦行を味合わせてもいいなら存分に勝ちなさい、と言っておくわ。ただし、言わせたら一生軽蔑するけど」

「勝ち目がなくなった!!」

「それじゃあスタート」

「やっとか。そしてものすごくいやな予感がする」

「そうね・・・まずは、直立二足歩行ができる」

「はい、予感的中。・・・なにそれっ!?」

「あれ・・・?その突っ込みはつまり、褒め殺しに耐え切れなくなったということ?」

「うっ。いや、違う違う。僕はただ「南蛮仕立ての煮物、ソースはれんこん摩り下ろしの胡麻和え」を略しただけだよ。いきなり食べたくなったから」

「そう、ならいいわ。次はあなたの番よ」

「突っ込んじゃいけないルールなのか・・・。そうだな、頭がいい」

「当然じゃない、なに言っているの?あなたとは生物学的に次元が違うのよ」

「え、なにこれ。僕は褒めるたびにけなされるルールなの?」

「オプションよ。えっと、次はね・・・ゴキブリを手づかみできる」

「やったことな・・・うう。突っ込んじゃいけないんだった。・・・みんなのことを考えくれる!」

「当たり前でしょう、あなたとはコミュニケーションの幅が違うのよ。・・・舌が日本人の平均よりも3ミリ短い」

「ついに褒め言葉でもなんでもなくなったな。そうだなあ・・・性格が明るい」

「虫ね。あなたみたいに地中から這い出てきた人類と一緒にしないでくれるかしら。・・・次は、えっと、うーんと・・・」

「うわあ、本気で悩んでいらっしゃる。自分から振っといて考えてなかったんだ・・・」

「・・・なんとかなってる」

「・・・・・・」

「ほら、次はあなたの番よ」

「・・・これってもう僕勝ってるんじゃないかなあ。次は・・・ああ、まだあれが残ってた・・・美人!」

「・・・・・・」

「あれ?暴言がない。そして何で6メートルの距離を一瞬にして詰めたの?・・・いてっ!・・・いってえ。あれ?ちょっと春日井さん!?人の頬ひっぱたいといてどこ行くの!?次春日井さんのターンだよ。春日井さん?春日井さ~ん!」




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