AIっぽいと言われ続けた俺、開き直ってAIを真似てみました
最初にそれを言われたのは、連載三話目だった。
『これ、AIですよね?』
画面に表示されたその一文を見たとき、俺は数秒、何も考えられなかった。
褒められたわけじゃない。けなされたわけでもない。
ただ、“お前じゃない”と言われた気がした。
それからも似たような感想は増えていった。
『文章が整いすぎててAIっぽい』
『展開が安定してる=AI感ある』
『淡々として人間味がない』
──好きに言ってくれる。
俺はただ、ちゃんと書こうとしただけだ。
読みやすく、分かりやすく、面白く。
それの何が悪い。
なのに評価欄には、星と一緒に“AI疑惑”が並ぶ。
──ふざけるなよ。
マウスを握る手に力が入る。
──消そうか。
──やめようか。
そんな考えが、頭をよぎる。
だがそのとき、不意に別の考えが浮かんだ。
──待てよ。
AIっぽいって、何だ?
誤字・脱字がない?
更新が早い?
テンプレ的な一定の面白さがある?
──それ、全部“強み”じゃないか?
俺は椅子にもたれかかり、ゆっくりと息を吐いた。
「……なら、やってやるよ」
開き直りだった。
どうせAIだと言われるなら、徹底的に“それっぽく”なってやる。
◇
翌日から、俺の生活は変わった。
朝起きて、プロットを組む。
昼に一本、夜にもう一本書く。
投稿は毎日、必ず同じ時間。
読者の反応は全部チェック。
どの展開でブクマが増えたか、どのセリフで感想がついたか。
分析して、次に活かす。
別に特別なことじゃない。
ただ、地道に積み重ねるだけだ。
AIでなく、人間が。
『え、更新早すぎない』
『この人ほんとに人間?』
『いやもうAIでしょこれ』
コメント欄は、以前よりも賑やかになった。
だが内容は、あまり変わらない。
AI、AI、AI。
──いいさ。好きに言え。
俺は黙々と書き続けた。
一ヶ月後。
ランキングに、俺の作品が載った。
最初は下の方だったが、徐々に上がっていく。ブクマが増え、評価も伸びる。
『安定して面白い』
『毎日読めるのありがたい』
『もはや生活の一部』
──ほら見ろ。
AIの疑いがあっても、面白ければ読むんだろ? 皮肉なものだ。
“人間味がない”と言っていた連中が、“安定して供給される物語”に依存していく。
三ヶ月後。
俺の作品は、ランキング上位に食い込んでいた。書籍化の打診も来た。
その頃には、コメント欄の空気も少し変わっていた。
『これAIじゃなくて努力じゃね?』
『人間でここまでやってたら普通にすごい』
『いやでもやっぱAIっぽいんだよなあ』
──どっちだよ。
思わず苦笑する。
だが、もう腹は立たなかった。
むしろ少し面白い。
そしてある日、俺はあとがきを書いた。
『いつも読んでいただきありがとうございます。よく“AIっぽい”と言われますが、全部、人力です』
それだけ書いて、投稿した。
数分後。
コメント欄が爆発した。
『え、マジで?』
『嘘だろ?』
『いや絶対AIでしょ』
『この更新頻度で人間は無理』
『逆に怖い』
──なるほど。
──そうか。
俺は画面を見ながら、小さく笑った。
結局、わからないんだ。
AIなのか、人間なのか。
はっきりとした確証はない。
ふと、最初のコメントを思い出す。
『これ、AIですよね?』
あのときは、あんなにも腹が立ったのに。
今は──
そう思うならそれでいい。
読者の皆様が満足するなら……。
自分が楽しんで書けるなら……。
肩の力が抜ける。
俺はキーボードに手を置いた。次の話を書くために。
人間が書く、AIみたいに。
誰よりも泥臭く。
──さて、今日も更新の時間だ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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