2025年 長月中下旬の短歌集
一対の靴や手袋眺めては
目を輝かす双葉の双子
古歌の閉じた目はまた開きはせなむ
今歌なるは屍人の散歩
蠱毒とはパンドラの匣〈我-汝〉
それは刻に毒となるらむ
あれこれと食べつくしては貪るも
獏も食べない悪夢はいらぬ
老いて亡き父母のまぼろし地に見ては
ふり仰ぎ見ば茜にや鳶
松風や正成もとめ嘶くか
汝が涙に村雨が降る
クサントス己が不死と知りながら
英雄の死をぺろり予言か
秋月や緋加里こぼしし収穫を
願いて加茄理まつ食座
犯しあい罪つくりては生きてあり
紅茶に浮きしミント眺める
ささくれて心養う本を開けば
頁の隅に棘きありて
小説は白き灰にぞなりぬれば
供養もされぬ無縁墓地かな
秒針と心拍のおと耳にせり
あれれどっちが僕の時計だ?
Tシャツの袖口に見る日焼け跡
こんがりお焦げグラタン風味
紅花よ四十人の賊徒らよ
咲きて盗みし珠はいずこへ
牛肉とレタス挟んだ僕たちを
齧った味を教えてたもれ
闇の野を行方しめざすゆく君は
月夜に咲いた摩訶曼珠沙華
黄金さす魂の寶を見るらむと
栗剥き来すに一匹の虫
赤い腹みどりの背から思いしは
懐かしきひと臆病な口
東風が来て西風が去りて綾とりす
独り身なりて月見あげなむ
白衣着た「痛いですよ」の声がして
振り仰いだら痛そうな顔
部屋べやを繋ぐ廊下は修羅場なり
脛打つ悪魔バナナなる皮




