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2025年 霜月中旬下旬の短歌集
散歩みち尨犬かえり秋の膳
ぷんと匂えし桂花かな
逆らうも妙に穏やかなるよしは
右も左もなき無きゆえなるか
胸に抱き寶船ぞと白い犬
七頭めなりてふと迷ひいぬ
黄から赤さま変わる絢あしをとめ
わか葉の春を待つ交差点
人類の巻物ずきは病なり
自覚はあれど吾もやめれぬ
「どちらまで」聞かれしせつな告げたしは
「天国まで」に憧こがる乙女
ゼウスです「儂の雷鳴 傾聴すべし」
「わが歌聴けと」ヘラは負けない
憧れて追いかけ習い知りたるは
身の監獄と掌の鍵
模倣して限界の果て残り滓
己が個性を知りし明暗
愛情の痕跡のこす手を選べ
ネイル褒めるか引っ掻かれるか
極北はこっちなんだと譲らずに
滅ぶ道ゆく吾が同胞よ
倒れても転んでもなお廻りゆく
四十億の時を漕ぐ地球
百億の光と時のその先を
知っていようかルナの背中よ
言の葉を飲み込めぬまま思ううち
溶けた雪片どこどこいった
飛べたのに飛べなくされた家鴨みて
老眼鏡のつるを開けり
未だ来ぬ未練たりとぞ胸食みて
溶けし繭たる孵化の虚しや




