仲間と設計図
アレスは村を出てこの地方で最も大きな都市であるエメラルドゥスに向かった。エメラルドゥスは知恵の都市とも呼ばれるため、情報が手に入ると考えたからだ。道を進んで行くだけ道が険しくなっていくため休憩などをはさみ数日が経った。森の中心部で大きな木の根っこに座り、バッグに入れた干し肉をかじっていると一つの影が見えた。その影は確かに人の形をしており、こちらに近づいているようだった。アレスは後ろの短剣にスッと手を持っていく。やがてその姿がはっきりすると、アレスは短剣から手を放した。どうやら旅人のようだ。フードを被った小柄な人で身に着けているローブは長い間使われていたことがわかるくらいボロボロだ。腰には見たことのない物を持っており、背中には弓を装備している。
その旅人はこちらに気付いたのか、警戒するように動きを止めた。
「旅の人か?」
旅人はこちらを睨むように言った。
「そちらこそ。こんな辺鄙な場所で何の用ですか?」
アレスは警戒を解くため少し笑みを見せた。
「俺はアレス。探求者だ。あなたも同じものを探している気がして」
その言葉に旅人の肩がピクリと動いた。フードから青い目が少し光って見える。その目は好奇心とも訝しみとも思える。
「探求者、ですか。どのようなことを?」
アレスは一瞬ためらった。一部の宗教などでは真実の探求は神への冒涜とされているからだ。だがアレスは言うことにした。この人も同じ真実の探求者である可能性を感じたからだ。
「真実だ。この世界が、一体誰によって創られたのか。その根源にあるものを探している。あなたは?」
沈黙が数秒続いた。やはりアウトだったのだろうか。草木が揺れる音や動物の鳴き声が森に響く。やがて、旅人はフードを下ろした。現れたのは、色素の薄い銀色の髪と、鋭い知性を宿した青い瞳を持つ若い女性だった。
「自己紹介がまだでしたね。私の名前はリアナ。私も真実の探求者です。この世界の『法則』が、どこから来ているのかを探しています。そして、その法則が、ある『意思』によって定められたものであるならば、その意思そのものを知りたいから」
アレスは驚いた。こんなに広い世界で同じものを探求する人と会うなんて。まるで誰かが操作したように。
目的は同じ。リアナはアレスについていく事にした。
二人はエメラルドゥスに到着した。街は活気に満ち溢れ、様々な種族が入り混じっている。だがアレスとリアナはすぐ違和感を覚えた。人々の記憶がとても薄いのだ。そしてそれに気付かない人々。
エメラルドゥス一の図書館に来た。この図書館いくら人の記憶が操作出来ても文献は誰かが処理しなければならない。だが図書館には百人以上の管理人が一つ一つの本を管理している。処理どころか盗むことすら許されない。
アレスとリアナが片っ端から探していった。そこで、題名を古代文字で書かれている本を見つけた。
それを取ろうとすると見知らぬ、白い髪と白い九本の尻尾が生えた獣人が現れた。
「おっと。それは無理ですね」
そのオーラは異常なほどの魔力と力を表していた。
「すみません。自己紹介が遅れました。私、「古の護り」の一人、秩序のオルドです。以後お見知りおきを」
そう話していると、オルドと名乗る者のポケットから「プルルルル…プルルルル…」という音が鳴った。
「すみません。少しお待ちください」
オルドはポケットから機械のような長方形の物を持って何かと話していた。数分後、オルドは急いだ様子でさようならと言い赤黒い炎を残して消えていった。
「古の護り…」
ようやく本を開きリアナが解読を始めた。そして解読を始めて少し後、リアナはその内容に驚愕した。
「これは…この世界の『設計図』です…この内容なら阻止しに来るのも分かります」
リアナによるとこの本は世界の成り立ち、法則、そして、この世界を創った二人の神についての記述があるらしい。そして神は自分たちの存在を隠蔽し、我々に「呪い」のようなモノをかけることでこのあるあるな世界を不自然に感じないようにしたなどと書かれているらしい。
アレスは違和感を感じた。なぜあそこで僕らを倒さなかったのか。なぜこの本にこんな内容が書いてあるのかと。まるで神に導かれるように…
この世界には「創世の残響」という世界の存在を支える八つの結晶が存在するらしい。二人はこれを壊すことで神に干渉できる、と考えた。
アレスとリアナは「創世の残響」を破壊しにエメラルドゥスを出発したのだった…




