プロローグ
「この世界は、誰が作ったのだろうか」
アレスは、古びた書物のページを指でなぞっていた。羊皮紙は黄ばみ、インクは薄れているが、そこに記された言葉は、彼の心に常に問いかけ続けてきた。彼が生まれ育ったこの世界――剣と魔法が息づき、様々な種族が共存する、まさに「あるある」な世界。しかし、アレスにはずっと違和感があった。あまりにも出来過ぎている。あまりにも都合が良い。まるで、誰かの物語をなぞっているかのように。
アレスが住む村は、広大な草原の真ん中にあった。朝になれば太陽が昇り、夜には月が輝く。人々は畑を耕し、動物を飼い、穏やかに暮らしている。だが、彼の内側には、いつも満たされない疑問があった。なぜ、この世界はこんなにも整然としているのか?なぜ、空にはいつも決まった星が輝くのか?そして、なぜ、誰もこの疑問を抱かないのか?
ある日、アレスは村の長老から、一つの古い寓話を耳にした。
「遥か昔、この世界には、まだ何もなかった。ただ混沌が広がるばかりじゃった。そこに、二つの意思が舞い降り、光と闇を分け、大地と空を創り、命を吹き込んだと伝えられておる」。
長老は、それはただの言い伝えだと言ったが、アレスの胸にはその言葉が深く響いた。「二つの意思」。それが、彼が探している「この世を作った者」ではないかと直感した。それは、もしかしたら自分たちの世界の外から来た存在なのかもしれない。
アレスは決意した。この普通な世界の裏に隠された真実を、そして、自分たちを創造した存在を、探し出すと。彼は旅立ちの準備を始めた。腰には父からもらった匠の手で造られた鉄の剣を吊るし、背にはわずかな食料と、あの古びた書物を入れたバッグをかける。彼の探求の旅は、ここから始まる。




