第98話 確信
荒唐無稽・・・現実離れ、根拠が無い、デタラメ、出任せ。
メイコの言動はどれもそのレベルに聞こえる物ばかりだ。不死者? 彼ら?
5人の表情を見て、その心の内を察するメイコ。
「確かにそうね、皆の頭の中にはデタラメとか、噓とか、何か仕掛けがある
んじゃないか、だと思う。瑞穂・・・貞光を病院に運んだのはあたしだ。
嘘を言ってごめん」
「ううん、余りにも情報が多すぎてみんな理解が追い付かないの。でも何で?」
貞光がメイコに問い正す。
「俺が一番聞きたかった事、それは自分の身に起きた本当の事、山形さん!
知ってるんだったら、隠さず教えて欲しい」
5人の眼がメイコを射抜いた。
それは、百戦錬磨のメイコもたじろぐほどの確信への渇望だ。
「きっかけは、貞光と瑞穂が付き合い始めた事・・・」
2人が顔を見合わせる。
「太田健太郎は瑞穂の事が好きだったんだ。多分本気だったんだと思う。
でも叶わなかった」
瑞穂の胃がキリキリ痛む。
「庭山と2人、貞光の自宅で待ち伏せして暴力で別れさせようと画策してたよ。
だけど庭山と仲違いしてね・・・その後は嫉妬と、貞光への執着心の塊だけ」
(やっぱりそうか、私のせいで貞光君は傷ついたんだ)
「また理解が追い付かない話をするけどいいかな?」
無言で頷く5人。
「ここに来る途中、不気味な音を聞いたと思う。あれは奈落と言ってあたしらが
調べた限り、強い嫉妬心、過度の執着心を持っている人間に反応する地獄なん
だ。太田はそれと繋がった」
「奈落、繋がる?」
「楔を打ち込まれて食い尽くされる。人格を無くして凶暴になるか廃人になるか
死ぬか。だけど何故か太田は奈落の子飼いになった。その時点で多分、瑞穂
から貞光に気持ちが移ってたんじゃないか」
「うへっ、気持ち悪いですな」
「何とか守ろうと思って。庭山も協力してくれてたんだ。だけど、あのデカいの
は分からなかった」
「そうか、それで・・・新井君に手製のボウガンを作ったから見てって言われた」
「病院の院長と、警察官はあたしらの存在を認識して肯定的に捉えている」
「メイコ達の存在を認識している人達ってどれ位いるの?」
サツキらしい意見だ。
「どうだろう、日本国内の不死者数は8千人程度だから1人につき5人が認識して
るとして4万人ってところ? 分からないけど」
「部長、どう? もちろん全て理解して消化するには、時間掛かると思うけど」
「うんそうだね、今日は頭がいっぱいだよ」
「写真撮っていい?」
場が和み始めた時点で、石井がここぞとばかりに発言する。
「ダメだ、小娘。あれを見ろ!」
メイコが指した先には、撮影禁止、録音禁止マークが。
そしてその横には貞光と瑞穂が座っている。
(貞光、あたしは君が大好きだ。心からそう思ってる。でも今は瑞穂と仲良くな。
あたしの出番は瑞穂が死んだあとだ、ごめんね瑞穂、これだけは口に出して言え
ないよ・・・本当にごめんね)
貞光への気持ちと、貞光の体内に宿る秘密は不死者の心の中に深くしまわれた。




