第96話 彼らの技術と古美術品 その3
巨大な岩盤に張り付くように作られた停留場から、コンクリートで作られた
階段を上る6人。剥き出しで取り付けられた電球がゆらゆら揺れて、荒々しい
岩肌に映る6人の影も、それに合わせて揺れている。
階段を登りきるとメイコの自宅にあった同じデザインの鉄製の扉が見えて来た。
上と下に鍵穴、時計を見るメイコ。
出発したのが午前10:18分、到着が同24分。6分ほどの移動だった。
「ここが到着地点、家では倉庫と呼んでいる。じゃー開けるよ」
ギギギー、そこは、出発した時と全て同じ作りの部屋だった。
「なんか同じ部屋の様ですが、本当に移動したので?」
「そう!あたしはデザインを変えた方が良いと提案したんだけどね。でも
そのドアを開けると全然違うから」
ドアを開けると長い廊下が続いていて、片側の壁には窓が付いているが
シャッターが下ろされていた。向かい側は一面ガラス張り。廊下は空調が余り
効いていない様で少し寒い。
サツキがスマホの地図アプリを見ると、岩手県の北上高地を指し示していた。
「ねー皆、ここ岩手みたい・・・」
「えっ、マジ?」
皆思い思いスマホを見たり、他の人のを覗き込んだり。
メイコが持っていたリモコンのボタンを操作すると、窓のシャッターが上がり
ガラスで仕切られた部屋の電気が灯った。
窓の外は鬱蒼とした森、所々に雪が積もっている。
ガラスで仕切られた部屋には、美術館の様に整然と美術品が並べられていた。
「ここがあたしの、あたし達の歴史が詰まった場所、皆先に進むよ」
メイコは、翔一が限られた上得意客と商談する時に使う部屋に5人を通した。
既に暖房が効いて暖かい。部屋のソファーや椅子にどっかと座り5人が一様に
ほっと一息を付いた頃、メイコが暖かいココアを出してくれた。
落ち着いた頃には5人の視線がメイコに注がれていた。
「うん、順を追って説明するよ。まずあたしも人間だという事が前提にある
ただみんなと違うのはその出自なんだ。あたし達は人と植物の中間・・・」
「えっ? 」
「そう、皆は人だ。人には寿命がある。長く生きた人でも110年とかその
あたりだと思う。だけどあたし達には死が無い、つまり不死者なんだ」
「・・・・・」
「近くで美術品を見てみよう、一緒に来て」
ガラスで仕切らた部屋は1年を通して温度・湿度が一定に保たれたいる。
並べられている品物は、古美術品に詳しくなくても値打ちがあるのだろうと
思える物ばかりだった。
「これらはどんな謂れの品物なので?」
(この男は流石だな)
森田が痛いところを突いて来た。
「うちの父親は武士でね、正確には武士に紛れてと言った方が適切か。それで
城攻めや、落ち武者狩りに参加してね・・・その時に」
「あいや、それ以上は言う必要はないです」
「えっ、何々?」
「そうそう、何?」
「貞光氏、石井氏、あとで我が説明します」
瑞穂とサツキはここに並べられた品物の出所が限りなく黒に近いグレーである
事を直ぐに察した。
「ところであの乗り物は・・・?」
「彼らも地球上に存在して生活している人類だよ。遠い昔地球にやって来たんだ。
皆、人しかいないと思っているけど、あたし達、彼ら、皆、もしかしたらそれ
以外にもいるかもしれないね」
「宇宙人だ」
石井の眼がランランと輝く。
「彼らとの取引には円を使ってるよ。ちなみにあの技術はサブスクなんだ
先月から月2万円上がった」
「お幾らなので」
「値上がり後で月25万円、税別」
「高っ!しかも税金とるんだ」
今体験している事は現実・・・だが俄かに信じがたい事ばかり。
メイコが語る話は余りにも荒唐無稽で全員、理解の範疇を超えていた。




