第94話 彼らの技術と古美術品 その2
メイコが上と下の鍵穴に鍵を差し込むと部屋の明かりが消えた。
ギギギーッ、如何にも重そうでシブそうな鉄の扉が鳴く。ヒュ――ッ、微かに
風が吹いている。扉の向こうは真っ暗で何も見えない。土ボコりの匂いと微かな
硫黄の匂い。
メイコが時計を見る。
「3・・・2・・・1」
真っ暗な闇の中に、白く輝く光がやって来て扉の前で止まった。すると、翡翠色の
光に変わり炎の様に揺らめき、千切れる。
よく見るとその光の中に、勾玉の様な淡い白緑色の楕円形の物体が浮かんでいた。
後部には丸い環の様な突起物が2つ。そのフチは茶色で、見慣れない文字の様な
物がぐるりと一回りしていた。
「皆、行こう」
呆気に取られる5人。一眼レフカメラを握る石井の手も震えている。
メイコに誘導されその物体に乗り込む途中、貞光は熱気を感じ下を覗いた。
遥か下をオレンジ色の川が流れている。
「溶岩? ね・・・」
(そうだ、喋ったらダメなんだ)
慌てて口をつぐんだ。
全員の乗り込むと、その白緑色の物体が殻を作り始め周りを覆う。
そして、少しの間浮遊したままゆっくりと進むと何かの準備が整ったのだろう
メイコが話を始めた。
「あたしら、今から東北地方の北上盆地に行くよ」
「?」
「だって、今からじゃ夜になっちゃうよ?」
「いや、時間にして5分程度だ」
「だって東北地方まで何キロあるの?」
皆が何の冗談かと騒ぎ始めたが、サツキがなだめる。
「みんな!今、メイコは全てを打ち明けてくていると思うの。だからメイコの
言葉を信じてこれから起こる事を楽しく体験しよ?」
「そうだね、そうだそうだ」
「山形さんごめんね」
「当然の反応だから気にしてないよ、はい!これでおしゃべり禁止。あとで
おしゃべり禁止の理由を教えるから」
静かになった空間、全員が気持ちを一つにした。
すると耳にほんの僅かな、聞こえるか聞こえないかの機械音、気が付くとそれは
物凄いスピードで進み始めていた。
自分達の周りは明るい光、外側は真っ暗、そんな状況にも目が慣れて来ると
薄ぼんやりだが、少しづつ外の景色が見えて来た。
それは巨大な空間、天井も壁も見えないほど。ただ、糸くずの様に細く見える程
遥か下を溶岩の川が流れていて、その溶岩の光だけが周囲を照らしていた。
あとは何もない。1分、2分、3分、その時だった。
ガラガラガラガラ、べッ、バキバキ、ガラガラガラガラ、バキバキ。
乗っている全員が遥か下から、何かを踏み潰すような音を聞く。
「シーッ」
メイコは口の前に人差し指を立てたポーズを皆に見せた。
非常にまずい物が出している音なんだと、全員が思うほど緊張した空気が流れる。
その音は程なくして聞こえなくなり全員、安堵の表情になった。
それから数分の後、前方に光が見えてくる。
物体は徐々にスピードを落とし、大きな岩盤の前で停止した。
人感センサー式の明かりが灯る。
そこは停留場になっていた。




