第114話 理由
「ロボ・・ここは暖かいね。その内に脳みそと目玉を付けてやるからね、もう少し
我慢して」
「あっ・・・・・・あっ・・」
不死者に衣服を貰った太田とロボ、今は日々労働に勤しんでいる。
それは何故か。来るべき自身とロボの復活を信じてやまないからだ。
そして、ここには太田の持ち得ない不死者達の情報が沢山眠っている。それも
太田のモチベーションが落ちない理由でもあった。
廃人達のコケをこそぎ落とす以外、さしてやることも無いこの場所は、確かに
退屈だ。外界から隔離されているこの場所は、何か目的を持たないと気がおかし
くなっても何ら不思議ではない。
「連中、確か言ってたな。最近廃人になった奴らの事。おそらく一番向こうの
端が一番古い時代の廃人なんだろう、すると手前か・・・・・?」
巨大なこの場所は、一番向こうの端と言っても肉眼では目視出来ない。見る限りは
楕円形なので、廃人が縦に並んで置いてあるのか、横に置いて置いてあるのかにも
よって端も変わってくる。
「まっ、いいさ。時間はたっぷりある様だし。なっロボ・・食事も出るってさ。
それに温泉もあるし、考え方次第だ・・・」
自分に言い聞かせる様に返事が出来ないロボに語り掛ける。
定期的になまぬる風が岩の隙間から吹き込んでくる。そして微かな硫黄の匂い。
「風が吹き込んで来ると言う事は、どこかが外と繋がっている?」
そんな思いを巡らしている時だった。
遥か向こうの管理事務所の明かりに人影が揺れているのに気が付いた。
「誰か来たのか? まっ、用があれば向こうから来るだろう。ほらロボっ」
サクッ、サクッ。
落ちていた小枝を、コケ落とし様にと手渡されたスクレイパーで削って作った
角を、ロボの頭に突き刺した。
「角だロボ! ははは、血が出ないじゃん」
そんな事をしていた矢先に小石で敷き慣らされた小道を軽自動車が走って来た。
太田とロボの脇に止まりドアが開く。
翔一と神籬、メイコの3人が降り立ち、2人に近づいて来た。
そして太田の後ろにぬぼーっと立っている、角を生やしたロボを見てギョッと
する。それは紛れもなく、鬼その物の姿だった。
「あら、あら、あら、これは、これは。見目麗しき我がクラスメイト様では
ないですか」
「ふん。元だ」
「ほらロボ、君をこんな状態にした張本人のお出ましだよ」
「貞光を射殺そうとしたんだ、当然の報いさ」
「それよりも太田君、何だいロボの見た目は?」
「先生、角を生やすのは校則違反ですか?」
神籬を茶化す太田。
「いや、そうじゃ無い。実に興味深いよ・・まさに地獄の鬼その物なんだよ!
写真を1枚撮ってもいいかな?」
「1枚1000円で~す。・・・・・そんな事より何か用でもあるのかな」
翔一が堰を切ったように話始めた。
「太田君、君最初は羽生貞光君の命を狙っていたよね。何で途中でやめたの」
「逆に質問だけど・・・何でそんな事を聞く?」
「・・・武市瑞穂の事で」
「で?」
「彼女、奈落に食われた」
「ぷっ、やっぱりね。彼女はこちら側の人間だよ。見た目は可愛らしいけどね」
「このままだと貞光君の命を食い尽くす。君なら何か策があるかと思ってね」
「無いよ」
「現に貞光君の命を狙う事、辞めたじゃない」
「それは勝負に勝ったからさ。生きてたのはそこの彼女が何かしたからじゃない?
何をしたか俺には分からないけど。勝てば興味は失せるよ」
極めて単純な理由に基づかれた行動だった。
「それだけ?」
「大人たちは深読みしすぎなんだよ。羽生は色で言えば真っ白なんだよ。
武市もそれに惹かれたのさ。だから黒くしつくせば興味は失せる。言い換えれば
悪は悪同士、いい子はいい子同士。山形と羽生は白、だからお似合いなのさ」
「1つだけ質問。瑞穂も最後は食い尽くされるのかしら」
「いや、俺の見立てね。彼女は筋がいい、俺みたいな立場になるんじゃない。
ちなみに、貝塚ルイはダメだね。彼女は食い尽くされて死ぬね。さー、もう
いいだろ。・・・行こう、ロボ!」
そう言うと2人はこの広い空間の端を目指して歩き始めた。




