表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守り人です・・不死者です。  作者: のねずみ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/119

第112話 旅立ちの準備だが

 山形家は引っ越し準備の真っ最中だった。メイコも副主将の座を既に後輩に

譲った後で、部活動もとっくに切り上げていた。


「お父さん、今度はどこに行くの」


「北海道だ。エゾ松の老木からSOSが来た。病害が広がっているそうなので

 食い止めて欲しいって」


「北海道か、いい所だね。力が付く場所だ。着いたらすぐ森に入るかな」


不死者達と自然は切っても切り離せない。不死者達を殺したければ自然を、緑を

全て()ぎ払えばいい。しかしそれは人類の破滅も意味している。彼らは地球その

ものと切っても切り離せない(えにし)で強く結ばれている存在だ。


「お父さん、その後連中はどうしてる?」


「大人しく作業をしてるよ。ちょっと不気味だけどね」


「奈落?」


「そう。太田君、子飼いだったろ、やけに簡単だと思ってさ」


「廃人の町からは抜け出せないんでしょ?」


「人間ならね、でも奴らは違うから。そうそう、太田君が言ってたよ羽生君の事」


「えっ、何て?」


「うん、お前を選ぶってさ」


「へー、そうなんだ」


にっこりと笑うメイコ。メイコにとっては嘘でも、根拠が無くてもそれはそれで

嬉しい言葉だった。


明日は父と連れ立って退学届けを出しに行く日、9月末日をもって退学する旨を

伝える日。メイコは寂しさで満ちている。


キー、カチャン。カツ、カツ、カツ。


午前7:30分。朝練がある訳で無し、だけど早めに登校するメイコ。

街路樹のスズメ達がチュンチュンと語り掛ける、お疲れ様、お疲れ様。


「ああっ、そうだね。この街にやり残した事は無いよね・・・・」


夏休みを含めればまだ2か月ほどあるが、時間の経過なんてあっという間だ。

9月に入れば、その日は加速度的にやってくる。

通学路の情景を一つひとつ噛みしめて登校するメイコ。

目からすっーと、一筋の涙がこぼれた。


【おはよう、おはようございます】


朝、早めに家を出たメイコ。静まり返った校門を想像していたが、意外にも

生徒達と出迎えの先生達でごった返している。

暑さ対策からなのか、夏の登校は皆少し早めの様だ。


そして、メイコもその中に身を置く。その時、何人か前に貞光を見つけた。

久しぶりに見る貞光の姿。声を掛けようか掛けまいか、胸がドキドキする。


同時に瑞穂の姿があるか無いか確認した。


(いない、よし声を掛けよう)


その時、メイコの横を人影が通り過ぎた、瑞穂だ。


「貞光君おはよう!」


ピタリと貞光の横に張り付き、チラリとメイコを睨む。


「ああ、おはよう瑞穂」


そう言って瑞穂の方を向いた貞光の横顔を見て、メイコは愕然とした。


(なんだあの生命力のかけらも無い表情は・・・全く生気が無いわ)


メイコは直ぐに2人を凝視した。

すると瑞穂のどす黒いオーラが貞光をすっぽりと覆いつくしている様が見て取

れた。貞光は見るからに苦しそうで、でも瑞穂はその事に気付いていない様だ。


(何だ?あれは)


メイコは立ち止まり電話をかけ始める。


「もしもしお父さん、夕方こっち来るでしょ。退学届けは出すけどあたし暫く

 こっちに残るね。えっ、理由は会った時に話す、それから叔父さんに招集か

 けて。大至急相談したい事があるの・・・うん、よろしくね」


職員室に行くのは午後4:30の予定だったが、何事が起きたのかと随分早く

翔一が姿を見せた。珍しくスーツ姿だ。着なれない服装とネクタイ、結び目が

気になるらしく頻繁に手をやる。


スーツのデザインも80年代で止まっていて、肩パットにワイドラペル、パンツ

もワイドだ。狙って着たのならおしゃれにも見えるが、そうじゃないのでどうにも

しっくりこなかった。


「お父さんこっちこっち。あれ見て」


メイコが父を連れて来た先には、貞光と瑞穂がいた。 


「何だい貞光君か・・ん? 随分と疲れてるな、生気がまるで無い」


「凝視して。瑞穂を見て!」


それは翔一も初めて見る現象だった。だが一つ確実に言えるのは、このままの状態

が続くと貞光の命が尽きる可能性がある事だった。


「何だと思う? 奈落かしら?」


「いやー、俺も初めて見る・・・隼人には連絡してある。今夜来るそうだ」


ほんの束の間かも知れないが、また貞光を見守る事が出来る。

メイコの心の中に巣作っていた寂しさは、いつの間にか消えていた。











































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ