第111話 要らない嫉妬
太田とロボが消えて貞光に平穏が訪れ、メイコがハグクミ高校にいる存在
意義も無くなった。そんな最終学年の夏が来た。
貞光と瑞穂、2人の付き合いも1年3か月を迎えようとしていた。
メイコと貞光を2人きりにさせて、しっかりと結論を出した貞光を優しく迎え
入れた瑞穂だったがあれ以来、気分に靄が掛かっている。
楽しいはずの青い情事の際も、貞光の奥底にメイコの匂いを何となく感じる様
になっていた。
「ねー貞光君、私に内緒でメイコに会ったりなんかしてないよね?」
突然の瑞穂の言葉に貞光は驚いた。
「えっ、だってほぼ毎日一緒にいるじゃない。会うはずも無いし会う時間だって
無いけど」
「じゃー会う時間があったら会うの?」
「会わないよ。どうしたの急に」
瑞穂のお腹の上に飛び散った情熱をティッシュで拭う貞光。
瑞穂からの申し出で、最近の2人は避妊をしなくなっていた。メイコの存在が瑞穂
に独占欲を持たせその上、周りの女子全員が敵に見える様になっていた。
口には出さないが、妊娠して卒業後結婚、出産までを目論んでいて、貞光の実家の
財力と、ウツボカズラの経営が上手く行っている今なら十分に生活が出来るとも
踏んでいた。
少しづつ、少しづつ、貞光は追い詰められ始めた。
ある時、部室の側の木陰で森田と石井が楽しそうに会話をしているのを目撃した。
自転車のスタンドを立てて、2人で立ち漕ぎをしながら何かを競い合っている。
「2人して何してるんだ? 汗が噴き出すよ」
貞光は炎天下を避け、2人の側に避難して汗を拭う。
「貞光氏、今日も暑いですな」
「何言ってる、熱いのは2人だよ。一体なにしてるの?」
石井が貞光の顔をまじまじと見つめる。
「羽生、瑞穂ちゃんに生気吸い取られてる? なんか疲れていると言よりやつれた
感じだよ」
「確かにそうですな」
気が付くと貞光は、瑞穂と離れて心底ホッとした時間を過ごしている自分を認識
していた。
(確か・・・そうだ山形さんと2人で会ったあの時と同じ感覚だ。最近山形さんと
会っていないな、元気にしてるかな?)
「じゃー行くね。瑞穂が待ってるから」
そう言って、足早に駆けて行った。
山形家訪問以来、園芸部の活動は滞りがちだ。サツキは受験を控えているので
園芸部にはほぼ顔を出していない。貞光も部長とは名ばかりの状態だ。
そんな時、事件が起こった。
貞光が1年生の女子に告白されたのだ。だがそれは、あっという間に瑞穂の知る
ところとなった。
「どう言う事?」
「勿論ちゃんとお断りしたよ」
「貞光君・・1年何組の子?」
瑞穂の静かな怒りが伝わってくる。その様子から、言えば直接相手のところに乗り
込むだろうと察した貞光は迷惑は掛けられないと嘘を付いた。
「いや、聞いて無いよ」
「貞光君は私の物なの。私だけを見ていればいいの」
「どうしたの瑞穂、最近おかしいよ」
「うんと言って!」
「・・・・・う、うん」
そう言わせると安心したのか貞光の腕に抱き付き離れようとしない。
「今日、お母さん夜までいないから家に行こ」
貞光の胸に瑞穂の重たい感情がずしりとのしかかった。




