第108話 呆気ない最後
呆気ないロボの最後、思えば当然の出来事なのかもしれない。
ロボは、奈落によって力を付けて来たが所詮は付け焼刃、恵まれた体格で
のして来ただけの存在。
長い長い修練と実践を繰り返しながら一撃必中の技を磨いて来たメイコに
勝てるわけが無かった。
そして、ロボの自宅。今や対不死者の拠点として太田が陣取っていた。
8畳の畳の間、表替えをして真新しい。人工素材の畳が多くなっている昨今
では珍しく本い草を使用していて、畳のよい匂いが充満していた。
午前0:30分、就寝していた太田が人の気配を感じて目を覚ました。
「やー太田健太郎君・・・」
黒い布の鉢金を額に巻き、戦国時代、自身が侍に紛れていた時に
使っていた鎧を身にまとっている。
「どうだい? 似合っているかい?」
「・・・あんたは?」
「うちの娘は強くてね・・・」
「山形メイコのおやじか?・・・と言う事はロボは負けたのかい?」
「相手じゃ無かった様だ」
「そうか、あれ程1人じゃダメだと言い聞かせたのに」
「自分がどれ位強いかを知りたいのは悪い事じゃないよ」
「それでロボは何処に?」
「今、こっちに向かっていいるよ」
太田はゆっくりと起き上がる。布団の左横には樫の木で作られた刀掛け。
どこで手に入れたのか本身の日本刀が掛けてある。
窓から入った満月の光に照らされて、鞘に塗られた本漆や鍔に施された
装飾が、鈍い光を放つ。
(へ~いい物っぽいね)
「どこで手に入れたのその刀」
「奈落だよ、あそこにはこの手の物がいっぱい落ちているよ」
インカム無線で話を聞いていた神籬に一抹の不安が過る。
(うわーっ、太田君余計な事を。翔ちゃんが行きたがるじゃない)
「今まで食う事しかしなかったのに、何で子飼いになれた?」
「さー分からないね。直接聞いてみれば?」
太田はそろりそろりと立ち上がると刀に手をのばし、中腰になっている
翔一に切り掛かる。
カツン!
だが、その刀の切っ先は鴨居に食い込んで邪魔をされた。
次の瞬間、翔一の先の尖った指先が太田の胸に突き刺さった。
そして大量に不死者の細胞を送り込む。
そう、翔一は刀の長さを計算して、振り下ろされる先に鴨居が来るような
場所に陣取っていたのだ。
(3、2、1)
太田は姿見に映った自分の体がみるみる膨らんでいくのを目の当たりにし
咄嗟に奈落の楔を自ら断ち切った。
バシッ・・・
太田の体は呆気なく粉々にはじけ飛んだ。




