第101話 実力差
「ロボ、遠藤君、山形ちゃんと明日やるそうだ。見に行くよ」
「うん・・・やりたい・・強い・山形」
「いよいよだね」
「うん」
太田は、既に大山を配下に置いていて、遠藤の行動は逐一、太田に伝わっていた。
遠藤は遠藤で、そんな事は百も承知。それよりも早く太田と手を切りたい事しか
考えていない。
夜、遠藤は自宅で地図アプリを開いていた。
「山形の登校時間は、午前7時頃か・・・早いな。であればここだ」
一番無防備であろう自宅前を指した。
「ここなら転がっていても家族が直ぐに見つけるだろう」
メイコの住んでいる古い住宅街は1日を通して人通りがほとんど無い、襲うには
絶好のロケーションだった。
加瀬と大岩、2人に連絡を取ってその日は早めに就寝した。
春の清しい空気が充満している。その日は今頃の季節には珍しく、朝霧が立ち
込めていた。朝6時50分。和洋折衷のシュロの木が植わっている住宅、そこから
メイコの自宅まで直線で約100m。遠藤と加瀬、大岩はそこで待機していた。
3分前、遠藤が真っすぐメイコの自宅に向かう。朝霧が少しづつ薄くなってゆく。
キーッ、カタン・・カツ・カツ・カツ。
メイコが自宅のドアを開けて出て来る音が聞こえる。
遠藤は既に高い塀の前にいる。玄関先、石造りの門柱の前で待ち構えてメイコが
出て来るタイミングを計る。
(3,2、1)
メイコが顔を出した瞬間、顔を目がけて左ストレートを放った。
だが、当たるはずの左拳に感触は無い。
代わりに遠藤は、体の正面、みぞおち辺りにメイコの膝を食らっていた。
「お前、誰だ? そんなに殺気を放ってたら誰だって分かるわよ」
もんどりうって倒れ込む遠藤に、メイコの言葉を聞く余裕などない。
「ぐぇっ、ぐえっ、うぐぐ、うぐぐ、げーっ、げーっ」
「あたしは今、お前に構っている余裕が無い!吐いたもの片付けておけよ」
そう言い残すと、遠藤の顔すら見ずに学校へ向かった。
朝霧はすっかり無くなって、穏やかな晴天が広がり始めた。
「ロボ見たかい・・・」
「うん・・・ムエ・・タイ、技・・テンカオ、山形強い・・やりたい」
加瀬と大岩が駆け付けた。
「立ってたの、10秒位?」
「うん、そんなもんだね」
げーげー言っていた遠藤の周りを見たが、吐いた物は無かった。
緊張の為か、昨夜から何も食べていなかったのだ。
「遠藤君、もう少しやれると思ったけど。山形ちゃんの隙すら見つけ
られなかったね」
「大丈夫・・勝つ・・ロボ」
「行こうか、スムージー買って行こう」
「・・・ベリーベリーヨーグルト・・・ヨーグルト」
「分かった、分かった」
太田とロボ、まるで散歩をしに来たかの様に、うずくまる遠藤とその傍ら
に立ち尽くす2人の横を過ぎてゆく。
加瀬がしみじみ言う。
「大岩・・俺達って何なのかね?」
「かませ犬だろ。全く、だせーよ!」
3人は、揃って学校を休んだ。




