第100話 半分半分
神籬はそのあとすぐに寝てしまった。
いい気持ちでソファーの上に横たわっていて、何時の間にか緩めたベルトと
ズボンからシャツが少しはみ出している。
「悪いね、皆。羽生君も、とんだ酔っ払いで」
翔一は酒が強いので少々の酒ではビクともしないが、神籬隼人は酒が弱いのに
酒が好き、そして何より酒の席が好きなのだ。
「でも彼と、メイコが羽生君を病院に運んでくれたんだよ」
「そうだったんですね。良かったですね貞光氏」
「羽生君、瀕死の重傷だったからね。動いている羽生君は、僕も彼も今日
が初めてだよ」
そして、ここから森田の遠慮のなさが発揮される。そこにコンビとなった石井が
乗っかると最悪だ。
「はて、最後の方は何て言ってました?」
「おい、それ以上はやめろ」
メイコが静止するが後の祭りだった。
「メイコちゃんが好・・・、あっ分かった!好きだ。山形さんの好きな人が羽生君
って事をを言うつもりだったんじゃない?」
「えーっ私じゃ無いんですか?」
「タラコには私がいるから、私で良いの!」
「・・・それじゃー、今日は色々疲れたから帰るね」
瑞穂はそう言って立ち上がると足早に玄関に向かう、貞光はメイコの顔を見つつ
その後を追った。
「私達、何かやらかしましたかね」
森田と石井が神妙な面持ちになる。
「いや・・・この件はそこに転がっていびきをかいている男が全て悪い、みんな
重ね重ねごめんね。神籬は当面出入り禁止にする」
翔一が深々と頭を下げた。
サツキは、うつむいてしまったメイコの両肩に手を置く。
(こんな弱々しいメイコ初めて見る)
「メイコ、また明日学校で話そ? ほら森田、石井ちゃん帰るよ。ところで
いつからあだ名? タラコになったの?」
「たった今からよ」
毒虫4人に何時も削られている石井、精神面のタフさは一流だ。
こうして貞光と瑞穂に続いて、3人も帰ってい行った。
「メイコ、さっき言った様に隼人は暫く出入り禁止にするよ」
「いや、大丈夫、必要無いよ。叔父さんがいなかったら、貞光を救うのが困難
だったかも知れないし。それにあたしの出番は瑞穂が死んだあと・・・」
「瑞穂ちゃん、男と女なんて一寸先は闇、あっけなく分かれる事だって
あるんだから」
「分かってる。明日、瑞穂と話をするよ」
そして、その瑞穂は貞光と手を繋ぎ、体を寄せ合い歩いていた。
半分は今、このひと時の幸せを噛みしめて、もう半分は1年の時、あれ程
知りたかった貞光に対するメイコの気持ちが露わになった事への警戒感。
メイコは付き合っている自分と貞光を、一体どんな気持ちで見ていたのか。
人でも、不死者でもそんなのは関係ない、瑞穂の心は張り裂けそうだった。




