『俺は全てを【パリイ】する ~逆勘違いの世界最強は冒険者の夢をみる~』読了エッセイ
「防御スキル? 地味そうだな」──正直、最初はそんな印象だった。攻撃魔法や剣技で敵をなぎ倒す派手さこそが、ラノベの花形だと思っていたからだ。だが、ページをめくるうちに、そんな先入観は綺麗に【パリイ】された。
本作の主人公は、防御一筋。しかも本人は「自分は平凡」と信じて疑わない。だが周囲は、その規格外の防御力を見て、勝手に「世界最強だ……!」と震え上がる。この“逆勘違い”構造が実に痛快で、読んでいて何度もニヤリとさせられた。防御は退屈? いや、それは攻撃に対する受け止め方を知らないだけだと、本作が教えてくれる。
特に魅力的なのは、【パリイ】という動作そのものの描写。剣戟、魔法、巨大なモンスターの一撃まで、すべてを受け流す様子が、まるで職人芸のように鮮やかだ。そして、主人公が自分の強さに無自覚であることが、周囲との温度差を生み、笑いと爽快感を同時に引き出してくれる。
読み進めるうちに、防御という行為が、単なる耐える手段ではなく、仲間を守る信念であり、生き様そのものだと感じた。最後のページを閉じたとき、私は思った。「強さとは、攻めることだけじゃない」と。
攻撃こそがロマンだと信じていた私の価値観は、この一冊で見事に弾かれた──そう、まるで【パリイ】されるように。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。