──アニメ『片田舎のおっさん、剣聖になる』を観て、ホッとした話。
昔から「何者かになりたい」って、なんとなく思ってました。
でも、30代を過ぎたあたりから、ふと気づいちゃったんです。
あれ……?
もしかして、自分って物語の「主人公」じゃなかったのかもな、って。
派手な転職もしなかったし、世界を変えるような仕事もしてない。
SNSでバズったこともないし、筋トレも三日坊主。
休日は、コンビニで買ったカフェオレ飲みながら、猫の動画を観てるだけ。
――地味すぎる。というか、物語の背景にすら映らないレベル。
「こんな自分、物語に出てきたらたぶん“通行人A”だよな」って、笑いながらも、ちょっとだけ寂しくなったりしてました。
そんなとき、なんとなく観たのが『片田舎のおっさん、剣聖になる』でした。
最初の感想は正直、「タイトル長っ」「おっさん? 主人公なの?」でした。
でも観ていくうちに、「あ、この物語、めっちゃいいな」って思うようになったんです。
主人公は、田舎でのんびり暮らしてる、地味〜なおじさん。
毎日コツコツ体を動かして、近所の人と世間話して、特に野心もなく、穏やかに生きてる人。
だけどある日、周囲が気づくんです。
「この人、めちゃくちゃ強いぞ……?」って。
本人は気にしてないのに、いつの間にか“剣聖”って呼ばれちゃう。
しかも、本人はそれでも「まぁ、今日も畑耕すか〜」って感じのテンション。
それを観てたら、不思議と心がゆるんだんです。
「目立たなくても、静かに積み重ねたものが、誰かの心に残ることってあるんだな」って。
あの作品を観て、ちょっとだけ自分に優しくなれた気がします。
若いころは、誰かと比べてばっかりだった。
「もっとすごい人がいる」とか、「何か成果を出さなきゃ」とか。
でも今は、ちょっと違います。
たとえば、同僚が「最近肩こりひどくてさ〜」って言ったら、私がこっそり持ってる湿布をそっと差し出せるようになったり。
あの作品のおじさんみたいに、「強さって、こんなとこにもあるんだよ」って思えるようになったんです。
そういうささやかな積み重ねって、きっと、誰にも見えてないようで、ちゃんと誰かの中に残るんじゃないかな。
思うんです。
私たちって、“主人公”にはなれなかったかもしれない。
でも、“片田舎のおっさん”には、なれるかもしれない。
誰かの期待を背負ってるわけじゃない。
でも、自分のペースで、小さな努力をコツコツ続けて、今日も一日をちゃんと生きる。
それって、けっこうすごいことじゃないですか?
『片田舎のおっさん、剣聖になる』は、キラキラした夢や野望じゃなくて、
「地味な日々の先にある静かな強さ」を描いてくれる作品です。
観終わったあと、不思議と胸があったかくなります。
ああ、こんな自分でも、悪くないな。
そんなふうに思わせてくれるアニメでした。
よかったら、疲れた日曜の夜にでも、観てみてください。
派手な演出も、涙を絞るセリフもないけど、じわっと沁みて、ちゃんと救われるから。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。