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『王都の行き止まりカフェ「隠れ家」~うっかり魔法使いになった私の店に筆頭文官様がくつろぎに来ます~』に寄せて—やさしさに包まれた、秘密の場所

 タイトルを見たとき、最初に思ったのは――

「なんて長くて、不思議なタイトルなんだろう」だった。

 うっかり魔法使い? 筆頭文官様? カフェ?

 いろいろ詰め込みすぎているようで、なぜか気になってしまう。


 でも読んでみると、その全部がちゃんとそこにあった。

 しかも、どれも過剰じゃなくて、ふんわりと寄り添ってくる。

 なにより大事だったのは――

 読んでいるうちに、自分の心がほぐれていったことだった。


「私も、隠れ家がほしかったんだな」と思った。

 毎日、ちゃんとやらなきゃ。迷惑かけないように。怒られないように。

 気づかないうちに張りつめていた心が、この作品を通して、すこしだけ緩んだ気がした。


 主人公は、うっかり魔法使いになってしまった普通の女の子。

 特別な力をひけらかすわけでもなく、目立つこともない。

 でもだからこそ、ふと自分を重ねてしまう。


「魔法なんてなくてもいい。ただ、誰かとあったかいお茶を飲みたいだけの日って、あるよね」って。


 私はよく、「これでいいのかな」って思う。

 SNSを見れば、みんなキラキラしてる。がんばってて、目標があって、充実してて。

 私はというと、帰宅してスウェットに着替えて、そのままベッドへ直行。

 自己肯定感なんて、いつも低空飛行のまま。


 でも『隠れ家』の世界にふれて、なんだか「それでもいいんだよ」って言ってもらえた気がした。

 魔法を使わずに焼いたクッキー。誰も驚かない紅茶。何も起きない午後。

 その全部が、たしかに愛おしかった。


 筆頭文官様が、ただ黙ってくつろいで帰る感じも、すごくいい。

 きっとこの人も、ちょっとだけ肩の荷を下ろしに来ているんだ。

 誰とも話さなくても、「ここにいていいよ」と言われているような空間って、なんだか憧れる。

 私も、そんな場所に行ったことがある気がする。

 でも、「欲しい」とちゃんと思ったのは、この物語に出会ってからだった。


 たぶんこの本を読んでいるときの私は、いつもより少しだけ、やさしかった。

 自分にも、世界にも。


 そんなふうに思わせてくれる物語に出会えたことが、うれしかった。

 行き止まりの先に、“隠れ家”があったみたいに。

 魔法なんてなくても、ほんの少し、救われた気がした。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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