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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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 不安にならないように、ドアは全開にしておくつもりだったんだ。

 まずは怖がらせた事を謝って……

 なんて伝えたら良いか考えていると、鍵を閉める音がして、驚いた。

 あんなに怖がっていたのに、どうして……


 せめて窓だけでも……

 動揺しながら窓を開けると、風が入ってきた。

 生徒会室は二階だが、中庭の前だから、この時間なら人もたくさんいるし、窓とカーテンを開けておけば……

「窓、開けないで貰えますか? カーテンも」

 そう言ってくるティアラの意図が読めない。

 さっき、『二人きりで話したい』と言っていたのを思い出す。


 もしかしたら本当に別れ話……?

 冷や汗が流れる。

 伯爵家から婚約解消を申し出たと噂にならないように、俺の対面を気にしているんだとしたら?

 周りに知られないようにとの、気遣いだったりして──

 それとも、しばらく距離を置きたいとか……?

 何度も誘ったりして、うんざりしていた……?

 良くない考えしか出てこない。

 迷ったが、言われた通り窓とカーテンを閉めた。


「とりあえず座ろう」

 ソファに座っても気持ちが落ち着かない。

「ティアラも座って」

 立ったままのティアラに声をかける。

 ティアラは距離を開けて、俺の横に座った。

 いつもだったら、くっついて座っていたのに……


『バート様、大好きです』

 幸せそうに微笑むティアラを思い出すだけで胸が痛くなる。

 もう何日も心の声を聞いていない。

 その間に気持ちが離れてしまったのだとしたら……


「ティアラ……」

 思いきって声をかけたが、ティアラは俺の顔を見るどころか、顔も上げなかった。静かに自分の手を見たまま。

 ──沈黙が怖い。

 重い空気に息が苦しくなってくる。


 それでも伝えたい。

 君が好きだって──


「この前はごめん。俺──」

 覚悟を決めて、話し始めると、ティアラの手が胸元に移動した。

 パチ……

 あまりに驚いて凝視してしまう。

 ティアラはなぜか制服のボタンを外していた。

 え……

「……ティ……ア……ラ……」

 慌てて目を逸らす。

 状況が分からず、混乱していると、ティアラが俺の手を握ってきた。 

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