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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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 あれから数日、俺は避けられ続けていた。

 先生の手伝いがある、補修を受ける、委員の集まりがある、試験勉強に集中したい、友達との約束があるなどの理由で、行き帰りの馬車の同乗、昼食、予定していた茶会、週末のデートを事如く拒否され、流石にへこんでいた。

 勿論、性急に迫った俺が悪い。でも──


 今日は朝から雨だ。降り続く長雨に、より気持ちが暗くなる。

 授業中、窓の外を見て、溜息をつく。

 ……相談してみようか。

 解決に至らなくても、この胸の内を誰かに聞いて欲しい。


 緊張しながら席を立つ。ゆっくりとその人の前に立つと、頭を下げた。

「殿下。ご相談があるのですが──」

 昼休み、俺の言葉に殿下が目を丸くする。

「……お前が俺に相談など初めてだな」

(そんな憔悴しきった顔で……)

「昼はお忙しいですか?」

「問題ない。生徒会室へ行こうか?」

(最近、ほとんど一緒にいないし、多分ルアーナ嬢の事だとは思うが……目の下に(くま)まで作って……難儀な奴め)

 殿下が気を利かせて言ってくれた。



「……で、何があったんだ?」

 生徒会のソファへ腰掛けて、待ちきれない様子で殿下が聞いてくる。

「笑わないと約束してください……」

「それは無理だな。お前相手に嘘はつきたくない」

(ルアーナ嬢と喧嘩をしたのか? やけに長いが……)

 殿下の声が重くのしかかる。  

 それは誰の目にも明らかだった。あんなに懐いていたティアラが俺を避けている。

 ティアラと喧嘩らしい喧嘩をした事がない上、あれから何日も経ち、俺は焦っていた。


「ティアラと目が合わないんです……」

「原因は?」

 開きかけた口を閉じる。

 無理矢理迫って怖がらせた。言わなきゃいけないのか……

 散々、殿下に手が早いと注意をしてきた俺が……

 

 ティアラの笑顔を思い出すと胸が痛い。

 こんな格好悪い相談、本当はしたくなかった。

 ──でも、このままは嫌だ。

 意を決し、殿下に目線を合わせる。


「……俺、我慢できなくて」

 絞り出すように口に出すと、殿下がプッと笑った。

(ついに手を出したのか! しかも拒否された!?)

「ふ、は……いや。ゴホンゴホン。すまん。続けて」

 わざとらしい咳払いをしてから、殿下が言う。

 笑わないでと言ったのに……

 雨の日にティアラがうちに泊まった経緯をポツリポツリと話し始める。

(突然、二人きりになり、理性が飛んだ……と)

「……そうです」

 否定できずに項垂れた。

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