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8

 あっという間にティーパーティーの日になった。

 色とりどり飾られた花。準備されたデザートは鮮やかにデコレーションされ、やたらキラキラしている。

 流石、王家主催。お茶会とは思えない程の豪華さだ。

 開始の時間前に俺は殿下の所へ挨拶へ向かった。


「ギル。アイリーンだ」

 白を基調にした装い。金と赤の差し色は王家の象徴。お揃いのタキシードとドレスを着ている二人は本当によく似合っている。

 空色……珍しい髪色だ……

 彼女は優雅に淑女礼(カーテシー)を取ると、ゆっくりと顔を上げた。

「アイリーン=レイシアと申します。レヴァイン様。ライルからよくお話は聞いていました。これから、どうぞよろしくお願い致します」

 殿下の事、敬称なしで呼んでいるのか。余程、仲が良いんだな。

(ライルの親友に紹介してもらえるなんて! 彼が私達のキューピッドなのね。確かに噂通り、格好良いわね。ライルの方が美しいけど!)

 殿下。俺の事を親友って言ってくれたのか。

 気恥ずかしくなり、俯く。

「昨夜は緊張し過ぎて、ほとんど眠れませんでしたの。……何か不手際があっても見逃してくださいね」

 その言葉だけで、彼女の人柄が分かる気がした。

 とはいえ、いずれ王太子妃になる方だ。

「レイシア様、俺の事はギルバートとお呼びください。敬称、敬語も結構です」

「まぁ、では私の事もアイリーンと呼んでくださる?」

「はい。アイリーン様」

「ギルバートは背がとても高いのね。それに瞳の色が素敵」

(ライルが唯一心を許しているご友人。いつも優しい人だと言ってるし、ライルの親友なら私も仲良くなりたい)

 和やかに話していると、殿下が前に出てきた。


「アイリーン。俺の前で他の男を褒めるな」

 不機嫌そうな声に驚く。

 殿下はアイリーン様をじっと見つめ、手を握った。

「や、やだわ。ライルったら! まさか嫉妬してるの?」

「……悪いかよ。ギルは男前だから、本当は紹介したくなかったんだ」

 拗ねたように殿下が顔を逸らすと、アイリーン様は嬉しそうな困ったような複雑な顔をした。

「確かにギルバートは格好良いけど、ライルの方が……それに私が好きなのは……」

 アイリーン様の言葉を聞いて、殿下が目線を上げた。

「好きなのは?」

「もう! 分かるでしょ!」

 アイリーン様は真っ赤になりながら、手を振り払った。

「分からないから、言ってくれ」

 今度はそっと両手を握って見つめ合っている。

「て……手を離してよ、ライル」

「じゃあ、言って?」

 急にイチャイチャし始める二人を見て、盛大に溜息をつく。


「あー。ゴホン」

 わざと大きく咳払いする。

「殿下? 俺がいるの、忘れてませんよね?」

「あぁ、勿論忘れてないとも」

(今の聞いた? 俺の婚約者、最高に可愛い。照れてる顔ってキュンとする。ギルよりも俺の方が格好良くて大好きだって。ふふ……良い気分だから、さっき、アイリーンがお前を褒めたのは許してやる)

 もう、どこから突っ込めば良いのか、分からない。


(ギル。二人きりになりたいから、どっか行ってくれ)

 おまけにとんでもない命令が来た。我儘(わがまま)な主はやり放題。仕方なく会場へ戻った。

 

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