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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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「パルミエもとっても美味しいです」

「……それは良かった」

 同じベルガモットの香り。いつもより上気した頬。向かいではなく、ティアラは隣に座ってきた。

 近いな……腕がぶつかる。

 少し引いたら、手を繋がれてしまった。


「バート様の手、大きいですね」

(いつもより温かい。同じ香油の香りで嬉しいな。二人きりで夜、お茶をしているなんて結婚してるみたい!)

 ティアラがやけに積極的過ぎる。それ自体は嬉しいんだけれど……

 結婚前だし、色々困るっていうか……

 確かめるように指をなぞられて、ゴクリと生唾を呑む。

(あー。幸せ!)

 俺も幸せだよ。でも、そんな風に触られたら……

 最近スキンシップが増え、二人の時には甘えてくる。


 俺は殿下と違って、結婚までは手を出さないつもりなんだ。俺が卒業した後、ティアラはあと二年、学生だし。

 大事にしたいから……


「……ありがとう? お、お茶のお代わりはどう? ティアラは指が細いね」

 もう自分が何を言っているか分からない。支離滅裂な自分の台詞に呆れる。

「お茶は大丈夫です。もう少しだけ、こうしててもいいですか?」

 そう言ってティアラは俺から離れない。

 こんなにくっついて、俺に襲われたらどうするんだ。もう少し自衛して欲しい。

 俺の想いとは裏腹に、ティアラはとても幸せそうな顔をしている。


「バート様、食べさせてあげます」

 ティアラがクッキーを口元に持ってきた。

 これを食べろと……

(あ、あれ? 私、間違えた!? 前、やった事あるから、今なら二人きりだから今ならと思って……失敗した)

 その声を聞いて、口を開ける。

(口を開けてくれた。わー八重歯が可愛い。バート様、照れてただけ?)

 だから可愛いはやめて。

 俺の顔ばかり見るティアラに困ってしまう。サクサクという音が部屋に響き、沈黙が訪れた。


(ルージュを引かなかったのは、はしたないって思われちゃったかな。でもキスしたい……)

 ティアラの独白を聞いて、紅茶を吹き出しそうになる。

(さっきの『口、開いて』ってどういう意味ですか? もしかして……もしかして、その先を求められてるのかしら)

 赤い顔で見られ、心臓の音がうるさくなる。


 二人きりの時、そういう表情はやめてくれ。

 大人の振りができなくなる──

 ティアラの腰を引き寄せ、唇を奪った。

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