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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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「ガナッシュ、美味しいです! 蕩けますね」

 顔を緩ませて、ティアラが言う。

「そうだろ? フルーツタルトも食べて。ティアラが喜ぶと思って、メイド長自ら果物を買いに行ってくれたんだ」

 俺がメイド長(ステラ)の話をすると、ティアラはとびきりの笑顔になり、振り向いた。

「まぁ、嬉しいですわ! フルーツも大好きなんです。ありがとうございます!」

 ティアラが礼を伝えると、ステラはそわそわしている。

「俺からも礼を言うよ。ありがとう、ステラ」

「レヴァイン家のメイド長として当然の事をしたまで。喜んでいただけて何よりです」

 すましてはいるが、実は……

(ギルバート様のお陰でティアラ様の可愛い笑顔が見られました! 朝から市場に行った甲斐がありましたわ……勉強も学年で上位だし努力家。刺繍や編み物の腕も()る事ながら、貴族なのに料理やお菓子作りも(たしな)むなんて! 一途な性格でずっとギルバート様一筋だし、本当に素晴らしいお相手を見つけましたね! 早くお嫁に来てくれないかしら)

 ステラは素直で優しいティアラの事を自分の娘のように思い、毎回、張り切って準備をしてくれている。


✳✳


「今日はバート様のご両親も王宮へ?」

「ああ、ティアラの所もだろ?」

「そんなんですよ。うちは滅多に王宮へは行かないので、昨日の夜から、お父様もお母様も緊張で食欲がなかったです」

(特にお母様は早起きして、ドレスにメイク大変そうだったな)

 ティアラが思い出しながら笑う。

「……川が増水しないといいけど」

 窓の外に目をやると、更に雨脚が強まっている。

「デルムガルト橋が渡れなくなってしまうので、そろそろお(いとま)しますね」

(本当はまだ一緒にいたいけど……)

「そうだな。これだけ降っていると危ないかもしれない。残念だけど、今日はお開きにしよう」

 デルムガルト橋はルアーナ邸への帰り道にある大きな橋だ。

 家令(ロバート)に花束をこっそり頼む。ロバートはコクリと大きく頷き、ホールから出て行った。

 

 帰り支度をしている時、従者が二つの手紙を持ってきた。

 一つはルアーナ伯爵からで俺(あて)。もう一つは父上からでティアラ宛だ。

 逆なら分かるが……

 頭を捻りつつ、封を開ける。


 ──その中身を見て、驚いた。

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