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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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「レヴァイン様、マドレーヌ貰ってください!」

 ズラリと並んだ女の子達を見て、後退る。ティアラを待っていたら、囲まれてしまった。

 ティアラと同じ学年の子だ……

「製菓の授業で作ったんです。上手に焼けたので」

「悪いけど……」

「レヴァイン様に食べて欲しくて一生懸命作ったんですよ!」

(婚約者のルアーナ嬢には負けてられないわ)

「お願いします! 一口だけでも!」 

(公爵家で、将来は殿下の側近、加えてこの美貌‼ なんとしてでも付け入りたい!)

「……ごめん」

 婚約者(ティアラ)がいるにもかかわらず、令嬢達はお構いなしだ。彼女達からすれば、公爵家の跡取りは魅力的らしく、断っても断ってもキリがない。卒業後殿下の元で宰相補佐をする事が決まっていて、噂にもなっているし、それも大きいのだろう。


「バート様!」

 ティアラの声がして、振り向いた。

 手には綺麗にラッピングされた包み紙を持っている。

(どうして、そんなにモテるんですか! しかも皆、可愛い子ばかり。私以外の女の子に触らないで!)

 ティアラの心の声に驚く。

 ちょっと待って。指一本触ってないから。

「バート様……」

 ティアラは何かを言いかけて、口を閉じた。

(他の子から貰ったりしないで……バート様は私の好きな人なのに! でも……言えないわ。そんな淑女らしくない発言。それに子どもっぽいと思われる)

 最近、ティアラからヤキモチを妬かれるようになった。


「ティアラ。それ、俺に?」

 声をかけると、周りの令嬢達は仕方なく口を(つぐ)んだ。

(……気付いてくれた)

「私のも……貰ってください……」

 泣きそうな顔を見て、堪らないと思っている俺は結構酷い男なのかもしれない。

「勿論。ありがとう」

 令嬢達を素通りし、真っ直ぐティアラの元へ向かう。

「……」

(他の子と話してたのに、私の所に来てくれた)

 ティアラの顔が(ほころ)ぶ。

(話してる途中だったのに)

 ティアラは目がくっつきそうになる位、緩んだ顔になった。 

 そんな嬉しそうな顔をして……


「今、食べていい……?」

 そっと肩に手を回す。

「バ、バート様! 他の方が見てますわ!」

(う……嬉しい! 人前でスキンシップを取ってくれてるなんて! ヤキモチ我慢して良かった!)

「バート様……」

 ティアラは耳まで赤くなっている。

 なんで、こんなに可愛いんだろう……

 余裕な表情ができなくて、そのまま髪を撫でた。

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