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婚約者の心の声が可愛過ぎて困っています  作者: りょう
第三部

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「どの食材も問題ございません」

 カイラード卿が伝えると、殿下は笑顔になった。

「アイリーン、どれが食べたい? 桃のタルト? それともサッパリしたオレンジのジュレ?」

「ありがとう。両方食べたい!」

 チラリとアイリーン様に見られて、会釈する。

(あの時、ギルバートに相談して良かった。話をたくさんしてくれるようになったし、妊娠が分かってからは益々優しくなったの)

 幸せそうに微笑むアイリーン様を見て、ほっとする。

(初期は流産しやすいからと、過保護になって少し困る時もあるけど)

 殿下の溺愛ぶりが目に浮かぶ。


「バート様」

 その時、横からティアラに抱きつかれた。

「……どうしたの?」

 人前ではそんなにスキンシップを取られる事はないから、少し驚いた。

(今、アイリーン様を見つめてた……?)

 飛び込んできた思考に、慌てる。

 それは誤解だ!

 ……と思うと同時に嬉しくなる。

 ヤキモチは俺の事を好きだから……?

(でも今日のアイリーン様、本当に綺麗。私ももっと大人っぽい髪型にすれば良かったわ。そもそもバート様、モテ過ぎなのよ! 皆、格好いいって騒いでるし)

 グルグル考えるのが可愛くて笑ってしまう。

 

「ティアラ」

「……はい」

 いつもより元気のない声にキュンとしてしまう。

「今日のティアラ、綺麗でドキドキする」

 誰にも聞こえないように、そっと耳打ちした。

(『ドキドキ』!? な、なんて事を……)

 ティアラの動揺が伝わり、頭を撫でた。

 誰かと比べる必要なんてないよ。

 俺の一番は君だから……

「この場で一番可愛い」

 少しでも不安をなくしてあげたくて、内緒話を続ける。

(『一番』! バート様の一番……)

 驚きつつ嬉しそうな表情にほっとする。

「バート様!」

「うん?」

「少し屈んでください」

 不思議に思いながら、屈むと耳に唇が当たった。

 耳へのキス。思わずゾワッとしてしまい、体が熱くなる。


「……こんな所で、そんな事しちゃ駄目だよ」

 さっきのキスを思い出してしまい、顔が熱くなる。

(照れている顔も……困ってる顔も素敵……)

 その時、視線を感じ振り向いた。


 殿下とカイラード卿に見られていて、顔から火が出そうになる。

 しまった。見られていた!

(おーい。ここ外だぞ? 人には文句言うくせに自分はイチャイチャしていいのかよ)

 不敵な表情の殿下と目が合う。

(ギルバート君、婚約者殿と仲良しなんだな。内緒話なんかしちゃって。可愛くて、応援したくなる。いやー。若いっていいな)

 カイラード卿はまるで親戚の叔父さんのようだ。

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